くいだおれ大阪 食のライブラリー

「大阪は、何食べてもおいしいなぁ」他府県から大阪を訪れた人から、よく聞く言葉です。たこ焼き、お好み焼き、きつねうどんといった“スタンダード”な大阪の味はもちろん、和食、洋食、中華に焼肉から喫茶店のメニューまで、平均点が高いというのです。「食い倒れ」というのは、広辞苑では、「食べ物に贅沢して財産を失ってしまう」というような意味ですが、そんなことはないわけです。大阪の「食い倒れ」といわれる所以は、「ほんまにおいしいもんを丁寧に食べつくす」という、味覚と食へのこだわりが作る食文化にあります。

大阪の食の魅力
大阪でおいしいもんは?と聞かれると連れて行きたいお店がたくさんあります。教えたい食べ物がたくさんあります。食材豊富、料理法多彩な大阪が作り上げる料理があります。そして何より長い歴史が積み上げた大阪人の「おいしいもん」へのこだわりが、他とは違う「大阪の味」。食材一つ一つを、料理人が工夫と技術と思いをこめて料理するから、“連れて行きたく”なるのです。関西でもっとも信頼されている料理雑誌の一つ「あまから手帖」の編集主幹で、大阪を代表する料理研究家の門上武司氏は、そんな大阪を「食の宝庫」だと言います。このサイトでは、皆さんに大阪の“宝”の食の魅力をご紹介します。
大阪食文化の原点
大阪をぐるっと見渡すと、太平洋から流れる黒潮が大阪湾、瀬戸内へと続く海。どーんと広がる大阪平野。それをばーんと扇状に囲むように連なる山々。この地形が語るのは、古来より水陸両方から様々な産物が集まる場所であり、海山里の食材が豊富に生産されてきた土地だということ。たとえば昆布。北海道や東北でしか採れない昆布が、江戸時代以降、北前船で大量に大阪に運び込まれます。そして、大阪の味=ダシの文化を確立します。このダシは、様々な食材の旨みをすべて生かしながら目にも美しい料理=うす味の文化を作り上げます。ここでは、大阪の食文化の歴史と背景を紹介します。
昆布・ダシ文化・食材・商人
ここでは、大阪の「おいしさ」を支える要素を四つのカテゴリーでご紹介します。一つ目は、「昆布」。江戸時代以降、北海道から届く昆布は、大阪の味をより深く多様な料理へと発展する大きな役割を果たします。二つ目は「ダシの文化」。大阪の料理には、昆布に、鰹節や煮干などのうまみを加わり、食材のハーモニーを楽しむ味覚を作り上げます。三つ目は、「食材」。飛鳥・奈良時代の頃より、水運の発達で日本各地、大陸・朝鮮半島から様々な食材が運び込まれました。近世以降、「天下の台所」と言われる日本の集散地の拠点となり、ますます豊富な食材が大阪に溢れます。又近郊でも様々な野菜や豊富な魚介がありました。四つ目は、これらの物流を支えた「商人」。商人たちによって、おいしいものをいかにおいしく食べるか日本の食の基本とも言える「味」が完成されます。大阪の風土や歴史から、原点を紐解いて見ましょう。
なにわの伝統野菜
「なにわ伝統野菜」とは、①およそ100年前以上から大阪で栽培されていたもの。②苗、種子等の来歴が明らかで大阪独自の品目、品種かつ栽培に供する苗、種子等の確保が可能、③大阪府内で栽培されているもの。この3つの条件を満たすものが、「なにわの伝統野菜」として大阪府から認定されます。伝統野 菜は、害虫の被害や、気温の変化に弱いため、ほかの野菜に比べて手間がかかります。しかし、「大阪の味」のために農家の人たちは大事に育て守っているので す。

ここで、「なにわ伝統野菜」の生産地を訪ね、農家のみなさんにその栽培方法や特徴などを順番に伺っていきます。
大阪市中央卸売市場
昭和6(1931)年、江戸時代から続いてきた青物市場、魚、乾物などの市場を統合し、卸売り専門の巨大市場として、福島の野田に「大阪市中央卸売市場」が開業しました。平成14年には新装し、現在30万㎡の敷地には、全国各地のみならず、世界各国から食材が集まってきます。江戸時代の天満や雑喉場の活気を思い起こさせます。
現在、大阪には多くの食材が集まります。そのひとつひとつは収穫の時期が違います。特に大阪人は「旬のもの」を大切にしてきました。さて、今年はどんな旬の食材が楽しめるのでしょうか。月ごとに、代表的な「旬のもの」を大阪市中央卸売市場本場市場協会資料室勤務を経験された酒井亮介さんに月ごとに様々な食材情報をご紹介いただきます。
船場料理の12ヶ月
「天下の台所」といわれた大阪の商人街の中心地だった船場。薬や呉服、材木、米などを扱う大店が並び、旦那さん、御寮さん、若旦那にいとさん(お嬢さん)たち家族と、番頭さんや丁稚などの使用人が寝食を共にしていました。普段は質素な食事ですが、毎月の節句や行事には、ご馳走が作られました。その料理は、大阪の食文化の凝縮でもあります。長年大阪の町人の生活史を研究している近江晴子さんが、船場の旧家出身の水落静さん(明治37年=1904年生)から、江戸から昭和初期にかけての大阪商人の食卓を聞き取りました。同家に伝わる「年中行事帳(文政期1818~1830年)」の資料を参考に、月ごとの行事と料理を紹介します。
大阪の味
大阪の味と一口に言っても、いろいろあります。ないものの方が少ないかもといえます。ここでは、「大阪の老舗」「大阪モダン」「大阪B級グルメ」「なにわの食材へのこだわり」「銘酒」「菓子」の6つのカテゴリーに分けて、大阪選りすぐりの名店をご紹介します。
老舗の味
何代にも渡って守られてきた老舗の味は、時代の新しい風を吹き込みつつ、私たちを裏切ることなく満足させてくれるものです。たとえば、あるウナギの老舗では、若き15代目が料理長の下、日々厳しい修行をしています。備長炭で丁寧に焼き上げる関西風の鰻の味は、鰻のこと、炭のこと、料理法などすべてを知らないと受け継げないからです。店の暖簾に恥じない味が、こうして受け継がれてきました。そんな店が大阪にはたくさんあります。
大阪モダン
文明開化で、大阪の街にも洋風でハイカラな近代文化が華開きました。着物を着ていた人々は、洋服を着るようになり、心斎橋をおしゃれして闊歩する「心ブラ」がステイタスな時代。もちろん食文化も多様になりました。カレーにシチウにハンバーグ、アイスクリームにパン、ケーキなど、洋風な食のスタイルが生まれました。「珍しいもの、新しいもの」は、今も「大阪の味」として進化しながら息づいています。
B級グルメ
街の路地を曲がると、家の軒先をちょっと改造したたこ焼き屋さんがあったり、お好み焼き屋さんがあったりするのが大阪です。その味は、「街の味」でもあり、ちょっぴり「おかあちゃんの味」でもあります。他にも、どて焼き、串揚げなど、気軽に手早く食べられる。お小遣いでまかなえる値段。おかずにもおやつにもなる食べ物。安いけど、ないと困る味。それが大阪の「B級」の「グルメ」です。
伝統食材へのこだわり
食に厳しい大阪人に答えるべく作られてきた野菜は、四季を通じて種類が多いのが特徴です。山間部では、椎茸や竹の子、栗など。平野部では、ごぼうや大根、キャベツ、玉ねぎ、トマト、ナス、砂地で採れるサツマイモ、沼地では里芋らやレンコン……といった具合です。春菊など全国屈指という生産量のものも多くあります。また、紀伊水道から瀬戸内にかけて、鰹にカレイ、マグロ、タイ、エビ、イカ、蛸、など多種多彩の海の幸にも恵まれています。流通の便がよくなったとは言え、近隣で収穫される食材は、味も人気も高いです。最近では、100年以上も前からつくられてきた「なにわの伝統野菜」も復活され、ますます大阪産の野菜が注目されています。大阪の地の味をぜひ楽しんでください。
銘酒
大阪平野を取り囲む山々は、実はおいしい水の源です。この山々から湧き出す水は、軟水で甘く美しい味がします。そしてこの水は、大阪の銘酒の数々を生み続けています。池田や能勢、高槻、交野、河内など、大阪各地で沢山の蔵元たちが、長い伝統を守って地酒を造り続けてきました。そうそう、日本で初めて国産ウイスキーが誕生したのも、島本町の「水」があったからなんですよ。ふくよかで豊かな味の大阪のお酒は、日本酒、洋酒問わず、多くのファンに愛されています。
菓子
饅頭、干菓子、餅、飴、あられ、アイスクリーム、カステラ、ケーキにチョコレートなど、大阪には、誇れるお菓子が数々あります。材料から作り方やデザインなど、こだわりあるお菓子を厳選してご紹介。秀吉の時代から作り続けている酒饅頭や、1個食べると10年寿命が延びるといわれる亀の形の饅頭、大正モダンな手作りアイスなど、「大阪」を感じるお菓子たちです。
名店のレシピ
「あぁ。このお料理、この味、家に持って帰りたい!」と思ったあなた。大阪の名店で味わったあの感動を、どうぞお持ち帰り下さい。ここで紹介するレシピは、各名店の料理人さんに、じきじきに教えてもらったものです。材料や手順はもちろん、プロのコツまで聞いてます。おしゃれな人参の“サラダ”も、名店のきつねうどんも、エビ芋で作ったホクホクコロッケも、再現できる“おいしい秘密”を教えます。ぜひぜひチャレンジしてみて下さい!
エッセイ集
「食」は暮らしに欠かせないがゆえに、暮らしを描こうとすれば、 料理することも食べることも欠かせなくなります。逆にみると、表現された料理の仕方や食べ方で、作者はどんな暮らしを伝えようとしているのか理解できるといえるでしょう。

そんな視点で「作品」をみれば、大阪の食に関する表現が多くあることに気がつきます。作品の世界にひたれば、生活の生き生きとした表現も、いつもと違った感覚で受け取れるかもしれません。

「エッセイ集」では、落語、文学そして映画という3つの視点から大阪の食文化をご紹介いたします。それぞれ異なる表現手法を通して、描かれ、残された大阪の町と人と食をぜひ味わってください。
落語
大阪の伝統芸能のひとつである上方落語の世界にも、食に関する表現が多くあることに気がつくでしょう。作品にひたれば、落語が描く庶民生活の生き生きとした姿も、またいつもと違った感覚で受け取れるかもしれません。 特に古典落語で、浪速の暮らしと人と食をのぞきます。
文学
近代の日本を代表する文豪、谷崎潤一郎は著書のなかに「鯛のうまい地方がもっとも日本的なる日本。
つまり、大阪から東へ行くほどだんだん田舎になる」と記しているくらい大阪と関西の食を賞賛しています。東京出身の彼が、なぜそう思うようになったのでしょう。そんな疑問から文学作品を読んでみると、これまでとは違った読み方もできそうです。
映画
視覚的な体験ですと、映画があげられます。いや、映画は総合芸術。それこそ、五感にせまる味わいがあるはず。愛(め)でるは、目に通じ効(き)くのは、耳か鼻か、なんて。映像に描かれ、残された大阪の町と人と食は、何を語りかけてくれるでしょう。