「日本三文オペラ」開高健
開高健さん作品紹介
「日本三文オペラ」は、新世界界隈を放浪していた主人公のフクスケが、女にスカウトされ、仕事を紹介されるところから始まる。その仕事とは、大阪の旧陸軍工廠に転がる大砲や戦車、鉄骨の残骸をかっぱらう仕事だった。通称「アパッチ族」と呼ばれる泥棒集団の仲間になったフクスケは、彼らの秩序整然とした組織力や、各自の個性を活かし切った仕事 ぶりを目の当たりにする。警察の網の目をかいくぐるべく、アパッチ族はあらゆる手練手管を用いるが、同じアパッチ族の間でも相手を出し抜き、生きのびるための狡猾な駆け引きが繰り広げられていた。やがて警察の取り締まりが厳しくなり、アパッチ族の秩序は乱れ、彼らはそれぞれの新天地を目指して離散す る・・・。「日本三文オペラ」は作者開高建が、アパッチ族という実在した窃盗集団を題材に、この奇妙な集団に生きる人間達をエネルギッシュに描いた作品で ある。
「日本三文オペラ」の舞台は、新世界、ジャンジャン町、京橋駅付近など、すべて大阪の下町。上品さとはおよそかけ離れた場所での、人間の逞しい営みが描かれる中で、登場する食べ物はもっぱら「モツ」(「モツ」は臓物の略で、ホルモン焼のこと)。「モツ」は物語の冒頭、新世界のモツ屋で、フクスケが女にモツ丼を振舞われる場面に、安価で精力のつきそうな食べ物として登場。また、フクスケがアパッチ族の仲間入りをした夜の宴会で、アパッチ族が食するのは、牛一頭分のホルモン焼。アパッチ族の過酷な肉体労働に耐え得る体力を蓄えるためであった。だが、これはどちらかというと贅沢な食材で、貧窮しているアパッチ部落では、牛の胃袋のことを「雑巾」と呼ぶ。それは腹に詰め込むだけの「モ ツ」なのだ。その食感はというと、フクスケ曰く、「あかんな。タイヤかんでるみたいやな。よっぽど地獄腹やないと食えんで」。
作中では、モツのほかにも、腹ごしらえの場面で出てくるドブロクや、アパッチ族同士の秩序を取り戻そうと会議を開く場面で出てくるうどん屋など、大阪の下町らしい食べ物が描かれている。
発表:『文学界』昭和34年1月1日号~7月1日号、第7回連載
作品設定の年代:昭和30年頃
開高健(かいこう・たけし)・作家
1930(昭和5)年、大阪市天王寺区に生まれる。大阪市立大学卒業後、1954(昭和29)年壽屋(現サントリー)に入社し、宣伝部での勤務のかたわら 執筆活動を開始。1957(昭和32)年に発表した『パニック』で認められ、翌年発表した『裸の王様』で第38回芥川賞を受賞する。ベトナム戦争、食、釣 魚などに関する数多くの力強いルポタージュを残した。1989(平成元)年、食道腫瘍の為逝去。
主な作品
巨人と玩具
流亡記
夏の闇
オーパ
もっと遠く!
もっと広く!
他多数