『じゃりン子チエ』
「おっちゃん、勘定ごまかしたらアカンで」。
通天閣のお膝元、大阪の下町「新世界」と呼ばれる町で、今日も元気な少女の声がする。
少女が店先で団扇をバタバタさせながら焼いているのは、串に刺したホルモンだ。香ばしさの中にちょっと甘さの混じったなんとも言えんいい匂いが周囲に広がっている。少女の名前はチエちゃん。大阪人なら誰でも知ってる『じゃりン子チエ』ちゃんだ。
大阪の食に関わる映画として、最初に紹介したかったのが、この『じゃりン子チエ』だ。これは、はるき悦巳の人気マンガを、宮崎駿監督のパートナーで、『太陽の王子 ホルスの大冒険』『アルプスの少女ハイジ』『おもひでぽろぽろ』などの作品がある高畑勲監督がアニメ化したもの。TV版もあるが、81年に劇場用作品も制作されている。
主人公のチエちゃんは小学四年生。バクチ好きで遊んでばかりいる父親のテツと、そんな男に愛想を尽かして家を出た母親のヨシエに代わって、一人で店を切り盛りしている自称「日本一不幸な少女」だ。
だが、そんな言葉とは裏腹にいつも元気いっぱい。なにをするにも懸命で、周囲の下町のおっちゃんたちとも気心で通じあい、テツが引き起こす騒動にも動じな い。ヴァイタリティの塊で、強さの、そしてやさしさの本当の意味を知っている少女だ。 もし誰かから「大阪の女の子って、どういう感じ」と尋ねられたら、この作品を見せてあげるといい。大阪の女の子の代表がそこにいる。声の出演は、チエちゃ んが中山千夏、テツが西川のりお。この二人は、もうこれ以外には考えられないハマリ役。その周りを関西のお笑い芸人たちが固めてそれぞれいい味を見せてくれるのだが、その中には鳳啓助、横山やすしといった懐かしい声もある。
今も新世界やお隣りの飛田界隈に行けば、いい匂いをそこらじゅうにふりまくホルモン焼きの店がある。ちょっと覗けば、きっとそこにチエちゃんがいるはずだ。