『悪名』シリーズ

「梅にウグイス、松に鶴、朝吉・清次の名コンビ。親分、一人で殴り込 みにいくなんてつれのうおまっせ」と、弟分の清次に言われて朝吉もニヤリ。「じゃあ、行こか」「行きまひょ」と、こうなる。勝新太郎演じる八尾の朝吉と、田宮二郎演じる清次のコンビが楽しい『悪名(あくみょう)』は、邦画ファンの間で人気の高いシリーズだ。

喧嘩と博打には滅法強いが、女性には純情一途で、お酒も一滴も飲めない朝吉と、腕と度胸は人一倍、そのうえ女にもよくモテて、計算高いことばっかり言ってるが実は情にもろい清次。そんな二人が、弱い者いじめをしている暴力組織を、決して刃物や拳銃は使わず、握りこぶしで懲らしめていく痛快シリーズ。

原作は今東光。カツシンと田宮のコンビ作は全部で14本あり、そのうち13本の脚本を、巨匠・溝口健二とのコンビで有名な依田義賢が書いている(因に、残り1本を書いたのは藤本義一)。監督は田中徳三が1・2作目を演出し、以降は同監督と森一生監督が交互に担当。田宮は初め、原作通りのモートルの貞という 役で出演していたが、2作目で殺されてしまい、3作目から実弟の清次に変わったという設定。貞が刺されるシーンは、日本一のキャメラマン宮川一夫のすばらしい撮影もあって、映画史に残る名シーンとなっている。

義理人情に篤く、女を泣かせる奴と曲がったことが大嫌い、そんな朝吉の大好きな食べ物がカレーなのは、悪名ファンの常識だ。

大好きなのに、カレーという名詞がなかなか覚えられない彼は、「おネエちゃん、あれおくれ、ごはんの上に黄色い汁がかけてあって・・・」「カレーライスですね」「そう、それや、ワイあれが大好きやねん」という注文の仕方をする。

大阪でカレーといえば、織田作之助の小説にも登場する千日前「自由軒」の名物カレーが有名。もちろんおいしくて、店に架けてある「虎は死して皮残す、織田作 死してカレー残す」の額を見ながら食べる味には格別なものがあるが、あれは汁というかソースのないドライカレーで、朝吉の好きなカレーとは違う。大阪には、ソースのかかったカレーの名店も多い。弱きを助け、強きを挫く。朝吉になったつもりで、そんな任侠心に体を熱くしながらカレーを頬張るのも、映画ファ ンの楽しみの一つだ。

『悪名』シリーズ
  製作年 タイトル 監督 製作
1 1961 「悪名」 田中徳三 (大映京都)
2 1961 「続悪名」 田中徳三 (大映京都)
3 1962 「新悪名」 森一生 (大映京都)
4 1962 「続・新悪名」 田中徳三 (大映京都)
5 1963 「第三の悪名」 田中徳三 (大映京都)
6 1963 「悪名市場」 森一生 (大映京都)
7 1963 「悪名波止場」 森一生 (大映京都)
8 1963 「悪名一番」 田中徳三 (大映京都)
9 1964 「悪名太鼓」 森一生 (大映京都)
10 1965 「悪名幟」 田中徳三 (大映京都)
11 1965 「悪名無敵」 田中徳三 (大映京都)
12 1966 「悪名桜」 田中徳三 (大映京都)
13 1967 「悪名一代」 安田公義 (大映京都)
14 1968 「悪名十八番」 森一生 (大映京都)
15 1969 「悪名一番勝負」 マキノ雅弘 (大映京都)
16 1974 「悪名 縄張荒らし」 増村保造 (勝プロダクション)