4月の食材
鮮魚
マダイ(真鯛)
スズキ亜目タイ科の海産魚で、日本人になじみの深い魚であり、北海道の南部(津軽海峡)から本州全域、とくに西海、南海の海水温の高い海域に多産する。沿岸性の回遊魚で秋冬は外洋の深い所に棲(す)んでいるが、陽春になると産卵のため、外海から内海の陸岸近くに群来するので、春暖の季節が年中の豊漁期である。俗に"桜鯛"という。古くから瀬戸内や大坂湾を本場とし、繁殖を終えて外海に出るころは麦の収穫期にあたるので、"麦藁(むぎわら)鯛"といって魚の味落ちをさしていた。産卵期も一部の鯛が内海に留まり、秋冬には魚味が恢復するので、美味の旬とする。大阪では"ホンダイ"という。
節分(今年は2月3日)から数えて八十八夜から120日位が「魚島」の旬である。魚島の季節には、鯛も豊漁になり値段も安く、味もよいので、大阪では商人たちが世話になった得意先等に鯛を贈るならわしがあった。
井原西鶴の『日本永代蔵』(貞享4(1687)年)巻二には「魚嶋時に限らず、生船(いけぶね)の鯛を何国(いずく)迄も無事に着やう有り。弱し鯛の腹に針の立所、尾さきより三寸程前を、とがりし竹にて突といなや、生て働く鯛の療治、新敷事ではないか」とある。
今では養殖魚のマダイが年中、大量に供給されるようになり、鯛の旬の季節がわからなくなっているが、旬の天然魚の鯛の味は格別である。日本海、四国、九州周辺での天然鯛は、旅行の際にでも賞味されるとよい。
鯛には、マダイ、チダイ、レンコダイ、チヌダイ等の19属100余種があるとされるが、アマダイ、イボダイ、キンメダイ、コショウダイ等のように別の品種も日本人はタイと名付けて珍重がっている。鯛は、古来から魚類の王者として祝事の供物に欠かせないものである。
栄養成分は白身魚の代表的なもので、ビタミン類を適当に含み、ミネラルが少ない。各種アミノ酸がバランスよく含まれ、うま味のイノシン酸が死後体内にたまりやすいので味がよい。
鯛の料理法は、地域には各種の郷土料理が考案されている。大阪での料理法は、兜煮、うしお汁等、普通の造り、塩焼、煮物とは別の料理がある。他に「小鯛の押鮨」は伝統のある大阪寿司を代表している。
イサギ(伊佐木・鶏魚)
スズキ目イサギ科の海産魚で、太平洋では関東以南から、日本海は新潟県以南の暖流海域に分布している。東シナ海、台湾沖でも獲れる暖海性の沿岸魚である。全長40センチにもなる。夜行性で日中は海藻の多い海底にひそみ、夜になると浮上して食餌する。6月から9月ごろに沿岸、内湾で産卵する。手釣、建網、定置網等で獲る。
スズキと並んで夏季の高価格魚で、麦の収穫期のタイは味が落ちたタイをさすが、この時期のイサギはムギワライサギといって旬の美味しいイサギのことをいう。初夏が旬であるが、秋口もまた美味しい。大型のものは脂がのり、造り、洗いによいが、塩焼、唐揚、フライ、ムニエル等、何にしても美味しい。マダイやスズキと区別がつかない程おいしい。あらは吸物に、皮はさっと湯引きして酢の物に、魚卵は甘辛く煮付けるとよい。骨が非常に硬く鋭いので、のどに刺さったりしないように注意すること。ビタミンDを多く含んでいるので、骨や歯を強くする効果がある。
塩干魚
シラス釜揚げ
シラスとはマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、イカナゴの稚魚期の総称である。シラス干は生後2~3カ月のカタクチイワシ、マイワシの稚魚を漁獲後すばやく煮上げする。煮熟が終われば、水をよく切り、冷やして製品にしたものが釜揚げ、天日または機械で乾燥させたものがチリメンジャコである。鮮度の低下 を防ぐため、漁獲後から煮熟までの時間は短いほどよく、製品のよしあしを決める。関西ではチリメンジャコというが、関東ではシラス干と呼ぶ。チリメンジャコはよく乾燥したもので、関東のシラス干は生乾きをいう。全く乾燥しないものを釜揚げという。
シラス干は小さいものほど軟らかく、味もよく値段が高い。
イワシは非常に栄養価の高いもので、脂質にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸が多く、血液中のコレステロール値を下げる。カルシウム、鉄分、ミネラル、ビタミン類なども適量が含まれ、昔から健康、長寿の食物とされている。
ホタルイカ(螢烏賊)
北海道、本州から朝鮮半島東岸にかけて分布しているが、日本近海では富山湾が有名で、魚津から新湊の湾奥の定置網で漁獲する。通常は外洋の水深200メート ル以深に生息しているが、晩春から初夏にかけて産卵のため岸によってくる。漁期は3~6月で、主漁期は4月中旬から5月上旬である。最後になると、岸に打 上げられるので"ホタルイカの身投げ"ともいわれている。
山陰からはじまり、3月1日に富山湾で解禁されたホタルイカ漁も最盛期を迎え、4月になると美味くなる。ゴロ(内臓)もたっぷりあり、おいしくなってくる。
春から夏にかけて産卵のため、富山湾に大群が押寄せる。日没から夜明けにかけてホタルイカの発光する青緑色で、海面が神秘の世界に変化する。この幻想的な光景からホタルイカの名がつけられたという。
昭和59(1984)年春、兵庫県・香住沖の底曳網漁船がホタルイカを水揚げしたが、最初はホタルイカとは知らなかった。調べてはじめてわかったが、この年 は富山県側では不漁だったので、情報を知った富山の加工業者が買付けに来た。これから以後は"生ホタルイカ"が大阪にも出荷されるようになった。
ホタルイカは食用になるイカ類で一番小さく、料理法はサッと火を通す位に茹で上げカラシ味噌、ワサビ醤油で食べたり、甘辛く煮込んだり、吸物にしたりする。
生ホタルイカは普通の造りと同様である。
淡水魚介
トリガイ(鳥貝)
東北から、東海、九州までの泥土質(潜っていないと生きていけない)の浅海に分布しており、かつて有名な産地であった熊本の八代海、伊勢湾、東京湾等は激減 している。年によっては異常発生することもあるが、他の産地の山口県、大分県の周防灘沿岸、愛知三河湾等も少なくなり、型の大きいことで有名な宮津湾、舞鶴湾も少なくなり、漁業規制(1日の漁獲量70個)している状態であり、韓国、中国からの輸入で補っている現状である。
外形は殻長7~8センチ、殻高も同じ7~8センチでよく膨らんでいる(宮津湾、舞鶴湾では殻長、殻高とも10センチを超えるものもある)。トリガイの殻は他の貝に比べて非常に薄いので、加工する時は両手で上下の殻をねじれば簡単に中身を取出せる。
殻 頂は紅色を帯びて下方腹縁は白色、殻表には40~50条の細い放射溝で黄褐色を呈している。ホタテやタイラギでは貝柱が特別大きく貝の大部分を占めている のに対して、トリガイでは足の部分が極端に大きく、これを食用にしている。この部分が鳥の嘴(くちばし)に似ているため(別の説によれば鳥肉の味に似ている)トリガイといわれている。
嘴の部分の色は中央から先端にかけては黒味がかった紫で、元の方の色は白く、これを開いて軽く湯通しし冷やしてからセイロに並べたものが店頭で売られている。
5~10月ころが産卵で旬の季節は秋から春先(宮津湾、舞鶴湾では6月末~7月末)。
非常に栄養価が高く、タンパク質(二枚貝の中で最も含有量が多い)、カルシウム、鉄分、ビタミンB1、B2、Cをたくさん含んでいる。
5月の産卵期前の4月が一番美味しい。にぎりずし、そのままあぶってワサビ醤油で、ワケギと酢味噌和え(カラシ酢味噌和え)、ミリンと醤油でつけ焼、てんぷら、大きいものは和食の巻き物、変わったところで干トリガイがある。
サザエ(栄螺)
暖流系の巻貝で、北海道南部から九州、沖縄、韓国まで広く分布している。備後水道から瀬戸内、鳴門海峡の海域のものは、角(つの)がなく、外海沿岸では角がある。波の荒い所で石や岩のすきまなどで流されないためと考えられる。
サザエの層は通常6層あり、殻の内側は真珠質の美しい光沢があり、殻口には蓋(ふた)がある。その裏に肉がついて4つの渦巻の一番奥に生殖腺があり、雌(メス)は暗褐色、雄(オス)は白色であるが、外観からは雌雄の区別はできないので、養殖生産を妨げている。
サザエは生まれてからしばらくすると頂上(貝尻)から日輪(1日1本ずつ)ができておよそ生後何日たったかわかる(拡大鏡で数える)。ちなみにシジミ等は一 潮(15日)ごとに一本ずつ溝が増える。サザエの色と成長は食べる餌によって異なる。アラメ(成長がよく白褐色)、ホンダワラ(成長がやや遅く褐色)、テ ングサ(緑褐色)である。
産卵期は6~7月ごろで、オス、メス別個体、旬は初春 ~夏にかけてである。サザエが他の貝類と違うのは、多くの貝は潮汐により活動するが、サザエは昼夜の周期で活動する(主に夜間、動き回り昼間は休んでいる)。移動は貝蓋を開き、親指の先ぐらいの足を出す。この足が3~5センチ伸び縮みして前進して移動する。
タンパク質、カルシウム、鉄分、ナトリウム、ビタミンAを含み、タウリンがカキ、ハマグリに次いで多く、コレステロールの低下、血圧の安定、糖尿病の改善、視力の回復に効果があるとされている。
造り、酢物、吸物、和物(あえもの)、その他各種の和食料理に活用できる。
代表的な料理に、
苦焼(にがやき):生きたサザエを殻ごと火で焼いて食べる。
壷焼(つぼやき):生きたサザエを殻から引出し、適当な大きさに切って、殻に戻し、生シイタケ、ギンナン、タケノコ、ミツバを加え、火にかけて食べる。
野菜
ソラマメ(空豆・蚕豆)
新石器時代に、近東で栽培がはじまり、各地に伝わる。世界最古の農作物のひとつである。わが国へは天平8(736)年に中国からインド僧によって伝えられ、 僧行基が初めて栽培したといわれている。莢(さや)が上向きに付くので、空豆、あるいは形が蚕に似ているので蚕豆と書かれ、ソラマメと呼ぶようになった。冷涼性の野菜で旬は4~6月で、旬のときは生でも食べられ、独特の甘みも味わうことができる。鮮度の低下が早く、未熟の豆がおいしいのは3日間だけといわ れる。その上、莢から出すとすぐに硬くなり味も変わる。莢が美しい緑色をして、背筋部分が茶色に変色していないもの、皺(しわ)がなく、豆の形がきれいに 揃っているものが良品であり、ビタミンB1、B2、C、鉄分などを多く含んでいる。やや未熟果を茹でて食べる。
野菜用としては、於多福(おたふく)、芭蕉成等の大粒種が栽培されている。
タケノコ(筍)
古来から日本人は竹を多様に活用してきた。食用タケノコの原産地は中国江南地方である。わが国へ中国から渡来したのは弥生時代ではないかといわれている。18世紀後半まではマダケ(真竹)、ハチク(淡竹)が主流であったが、元文元年(1736年)中国から琉球を経て、薩摩藩主がモウソウチク(孟宗竹)の2株を導入したのがはじまりで、のちに全国に広がったと推測されている。食用にされるタケノコの大部分がモウソウチクである。一般に温暖地を好み、九州の早いところで3月ころより収穫がはじまり、しだいに産地は北上していく。
春の季節野菜として日本料理や中国料理などに広く利用されている。ビタミンB2、C、繊維質が多く、腸の働きや便通を良くする働きがある。
果物
スイカ(西瓜)
南アフリカのカラハリ砂漠が原産で、日本への伝来は天正年間(1573~91年)ポルトガル人によって九州に入ったとされる。夏の汗のかく季節の代名詞といわれていたが、現在ではハウス→トンネル→露地の順に栽培され、1年中出回るようになった。4月のスイカは、ハウス栽培のもので熊本産である。
スイカは水分が大部分を占めており、その他カロチンが比較的多く、ブドウ糖、塩分も含んでおり、利尿作用、肝臓疾患等に良いとされている。
カット販売が多く、安心して選べるのが特徴である。(種子の黒いもの、種子の回りが柔らかくないものを選ぶと良い)
冷蔵庫で冷やしすぎると、おいしさが損なわれるので、冷やしすぎに注意しよう。
キウイフルーツ
茶色の円筒形で毛が密生している姿がニュージーランドの国鳥キウイバードに似ているので命名された。もともとはチャイニーズ・グーズベリーという中国南部原産のスグリの仲間で、1906年ニュージーランドの学者が持帰り、改良されたのが現在のキウイである。
品種はへイワード、アボット、モンティー、ブルーノ等であるが、大半がへイワードである。出回り時期は、ニュージーランド産が5~12月、国産は12~4月である。
選ぶポイント(鮮度)は果色が均一で毛茸の破損がなく、軟化していないものを選ぶと良い。さわって少し軟らかさを感じる頃が食べ頃で、未熟のものは酸味が強 いので、リンゴと一緒にポリ袋に入れておくと、リンゴの発散するエチレンガスの働きで、2~3日で熟す。硬いものは暖かい部屋において少し軟らかくなって から、冷蔵庫で冷やして食べると良い(硬いまま冷蔵庫に入れても軟らかくならない)。
果物には身体のリズムを整える作用がある。キウイフルーツにはビタミンC、繊維分が多く含まれており、ビタミンCには壊血病を予防し、老化の原因といわれているフリーラジカルを消去する働きがある。
繊維分には便秘の予防や大腸ガン予防効果があるともいう。またタンパク質分解酵素も多く含まれているので、消化の働きを助ける。食後のデザートや飲酒のあとにぜひともおすすめしたい。