5月の食材

鮮魚

カツオ(鰹・堅魚・勝魚)

カツオ(鰹・堅魚・勝魚)

カツオは古くより関東から三陸沿岸ではなじみのある魚で、黒潮にのって2~3月頃から、台湾沖、沖縄沖を通り南西諸島から薩南沖をイワシ、イカを追って北上してくる。高知沖から紀伊半島沖で漁獲されて関西に出荷されていたが、この時期のカツオは脂肪が少ないので鰹節の原料にされていた。そのため関西では生鮮 カツオに親しみが少なかった。日本近海のカツオ漁業は、生きたカタクチイワシを撒餌(まきえ)にして疑餌針(ぎじばり)で釣る、豪快な一本釣りがよく知ら れている。この一本釣りのカツオは5月頃から旬に入る生鮮カツオで、「タタキ」や「つくり」にして食味されている。「目に青葉 山ほととぎす 初かつお」 (素堂)の俳句によって初夏の風物とされてきたのは江戸時代の話。早春の季節に薩南沖から北上するカツオの魚群が遠州灘から伊豆半島付近に達するのが5月初旬~中旬。相模灘に近づく時分には脂肪がよくのって、関東ではちょうど食べ頃になる。だから、この季節のカツオを詠んだのは江戸だけの風物詩で、残念ながら関西ではこの時期のカツオを生食するのは無理だった。

関西でカツオが一般に普及するようになったのは1970年代。冷凍技術の発達で年中カツオの「タタキ」が百貨店やスーパーで売り出されるようになってから である。この冷凍カツオは、赤道の近く南方海域まで出漁する遠洋カツオ・マグロ漁船が漁獲後にすぐ急速冷凍したもので、鮮度を保ちながら日本へもって帰ったもの。こうして80年代に入ってからは国内で年中消費されるようになった。

春先の「上りカツオ」が、夏には本州沿岸を北海道まで北上し、水温の低下する秋口には充分索餌(さくじ:餌をたべること)して南下をはじめる。これが旬の「戻りカツオ」「下がりカツオ」と呼ばれるもので、脂がのって美味しい。ただし、戻りカツオの魚群は沿岸から遠ざかっているため、昔は漁獲できなかったの である。この時期のカツオの魚肉には、旨み成分のイノシン酸に、ビタミンD、ビタミンB群が多く含まれている。

現在、大阪市場には宮崎、愛媛、高知、徳島、和歌山、三重、静岡、千葉方面の各産地市場から入荷しているが、漁況をみると今年は昨年より漁が少なく、 4月の入荷量も前年の半分程度であった。相場は天候に左右されやすく、強含みに推移するだろう。房州方面にまとまった漁が出てきているが、その他の海域の水揚げは安定していない。6月に入ると水温の上昇とともに水揚げが増えると予想されるが、入荷数量は昨年より少ないだろう。

カツオの脂肪の少ないものは「鰹節」にする。「松魚」とも書き、目出度い祝儀物で、婚礼の引出物に古くから喜ばれてきた。カツオの脂肪が少ないのは春から初夏までで、秋になると脂肪がのり、鰹節には不適である。

生鮮カツオは鮮度が落ちやすいので、身がしまり、縞模様がはっきりしていて、エラが鮮やかな赤色をしているものを選ぶとよい。新鮮なものは「つくり」にするが、生臭いのでショウガ、ネギを臭い消しとして添えて食べる。また、表面を軽く火であぶってから冷水で冷やし、ニンニク、ショウガ、アサツキを散らし、酢醤油などをかけて「タタキ」にする。濃い味をつけて照り焼き、煮物、佃煮、角煮、鰹田麩(かつおでんぶ)にもなる。内臓を塩辛にした「酒盗(しゅとう)」 は酒の肴によく、ビタミンdが特に多い。

トビウオ(飛魚)

トビウオ(飛魚)

トビウオは飛翔することから、縁起のよい魚として祭などに使われてきた。しかし昔の薩摩藩では「地獄の魚」として食べなかったという。これは薩摩の郷士たちが、「カツオ一本釣の餌が食えるか」というプライドからでた話らしい。

トビウオにはアキツトビウオ、トビノウオ、ホントビという別名がある。地方名も多く、アキトビウオ、シントビウオ(和歌山)、アゴ(九州地方、中国地方、近畿地方、北陸地方)、タチウオ、ツンバクロ(新潟)、トンボ(北陸地方)、トビノウオ(関東地方)などがある。

ダツ目トビウオ科に属し、近縁種が多く、日本で知られるハマトビウオ属の魚種だけで20種もある。本種はホントビといって他種と区別することもある。トビウ オ科の中ではトビウオ(ホントビ)、ホソトビ、ツクシトビウオ、ハマトビウオが近海に生息している日本漁業で重要な魚種である。

津軽海峡以南から九州までの各地に分布しており、主な産地は屋久島、宮崎、高知(カクトビ)、長崎、山陰(マルトビ)であり、漁獲方法は船曳網、定置網、刺網等である。

旬は4~8月の盆ごろまでである。

白身の魚で、タンパク質が多く、脂質が少ない。味が淡泊なので、生食より干物や煉製品(蒲鉾類<かまぼこ>)に向く。ただ鮮度のよいものは造りにできる。軽く塩をふって30分ほど休ませてから降ろすとよい。

マルアジ(丸鯵)

マルアジ(丸鯵)

大阪の夏祭には欠かせない魚の一つである。丁度祭の季節に大阪に入荷する魚で、6月から7月が最も脂ののった旬の時期になる。紀伊水道、大阪湾、播磨灘にかけての海域が最盛期に入る。

マルアジはアジ科の海水魚で、ムロアジ類の一種。南日本から東シナ海にかけて分布している。体長30センチから40センチ位。側線上の稜鱗(ぜいご)は、尻尾までの全域まである。体色は背中の方が緑青色で、腹の方は淡黄色である。

沿岸から沖合の表層・中層を群れで泳ぎ回る。主に小形の甲殻類や魚類などを食べる。

体の断面がまるみを帯びているのでマルアジという。棒受網、定置網、釣等で漁獲する。旬は夏で、食用や干物に加工している。造り、タタキ、塩焼、煮付にする。マルアジの塩焼は大阪の夏祭の風物詩である。

この月のおすすめ品:イサキ、カツオ、マダイ、レンコ、キス、ハモ、ケンイカ、ウシノシタ、アワビ、トコブシ、平子イワシ、サヨリ

塩干魚

塩ザケ(塩鮭)

塩ザケ(塩鮭)

5月になると、道東方面の「トキサケ」漁が本格的にはじまる。関西でも旬のものとして定着してきた。脂ののった塩蔵トキサケが鮭鱒(けいそん)の中の一番おいしい時期になる。解禁直後は高値で推移するが、徐々に値段もこなれてくる。

サケと日本人との付合いは古く、東日本だけでなく、九州の玄界灘沿岸の河川まで分布し生息していた遺跡が残っている。古代からの付合いがあり、万葉の時代から中世、近世の各書物にもサケにまつわる挿話が記載されている。

サケは川で孵化(ふか)し、海に下って成長し、産卵のために群れをなして生まれた川に帰ってくる帰川本能をもっている。この本能により「母川回帰」をして、河川で産卵している。この本能を活用して明治期からサケの放流事業がはじまっている。

日本列島に生息しているサケは、魚種的にはシロサケ、カラフトマス(アオマス)、サクラマス(ホンマス)、ギンザケ、ベニサケ、マスノスケ(キングサーモ ン)、ニジマス等があるが、これらをサケやサケ・マスと総称してきた。秋の季節に産卵に溯上してくるものを秋味(あきあじ)というが、4月から5月にかけ て北海道の近海沖に近づいたものを定置網で漁獲する。これが今旬に入った塩蔵「トキシラズ」である。

チリメン(縮緬)

九州の宮崎や鹿児島でシラス漁がはじまっている。上干物(乾燥度の高いもの)で入荷しているが、まだ本格化していない。和歌山沖でシラスが大量に水揚げされているが、魚体が大きいため、太白(ふとじろ)にして関東に出荷されている。今年は去年と同様に春漁が期待されているが、淡路、東海、関東とほぼ全国各 地で豊漁が期待できる。値段も安定するだろう。

5月は、太白チリメン(鹿児島産)で、東京の消費が主だが、今後は関西でも売れそうだ。柔らかい太白チリメンは食べやすい。

この月のおすすめ品:塩サケ、塩助子、辛子明太子、開アジ、開丸アジ、塩サバ、カツオ生節、カツオタタキ、チリメン、小女子チリメン

淡水魚介

アユ(鮎・香魚)

アユ(鮎・香魚)

6月にアユ釣が川開きで解禁される。大部分は養殖アユであり、入荷量も多くなってくる。アユは古くから日本人となじみがあった。『万葉集』の中の古い歌にもうたわれている。縄文時代早期の土器にアユの背骨を使って文様をつけた説もある。

本州、四国、九州の河川に産するが、北海道南部、台湾北部、朝鮮、中国南部にも生息している。アユは近縁のサケ・マス類と同じで、川で生まれ、幼時は海で育 ち、後に川に帰る遡河魚(そかぎょ)である。10~12月ごろ川底の砂や小石に産み付けられ、2~Ⅲ週間で孵化する。稚魚は河水に流されて海でプランクト ンを食べて越冬する。3~4月ごろ水温が15℃位になると幼魚は群れをなして溯上する。口に歯ができたら、川底の石にある珪藻(けいそう)、らん藻などを 食べて大きくなる。5~6月ごろには、全長10センチになり、「若アユ」とよばれる。山間の清流に遊ぶ若アユの姿は、初夏の風物として愛でられてきた。夏期に盛んに食物をとり成長して、初秋のころには全長23センチ、体重100グラム以上になり、性的に成熟しはじめ、徐々に中・下流の産卵場に降下する。これを「落ちアユ」または「下りアユ」という。産卵期が近づくと体色は黒褐色をおびて「くさびアユ」という。産卵を終えると大部分のアユは死んで一生がおわる。アユの寿命は大体1年であるから「年魚」ともいわれている。ただ例外として水温の高い河川では「フルセ」と呼ぶ2年魚が生息することもある。アユの養殖技術が進み、天然魚に近いものができ、値段も手頃になってきた。

食べ方は、塩焼に蓼酢(たです)が代表的であるが、姿寿司、背ごし、酒蒸し、フライ、唐揚、てんぷら、マリネ、木の芽田楽、甘露煮などの料理方法がある。

イワガキ(岩牡蛎)

イワガキ(岩牡蛎)

北海道以南の塩分濃度2.8~3.5%(マガキは0.7~3.2%)の岩礁域に生息しており、7月ごろ旨味成分のグリコーゲンの含有が最大になり、旬になる(マガキは1~2月がグリコーゲンの含有が最大になる)。

近年は養殖も行われるようになり、マガキと違って商品サイズ300~400グラムになるのに3~4年以上かかる。現在各産地とも禁漁期間や1日の漁獲制限、サイズ制限をしており、資源保護をしながら採算ベースに合う養殖技術の開発につとめている。

獲量の多いのは秋田、山形、京都、鳥取であるが、関西へは宮城、千葉、石川、三重などから入荷している。

食べ方はマガキと同じように考えたらよいが、サイズが大きいので、一粒でイワガキのステーキなどもできる。

この月のおすすめ品:ヤマトシジミ(鳥取県宍道湖など)、ニジマス、ウニ、シャコ等

野菜

キュウリ(胡瓜)

キュウリ(胡瓜)

インドのヒマラヤ山系の南部山麓のシッキム付近が原産地といわれるが、アフリカ起源説もある。ヨーロッパ、中国南部、東南アジアの3つの地方に伝わり、日本へは6世紀ごろ中国から渡来したらしい。名前の由来は熟すると黄色くなるため黄瓜、それがキュウリという呼称になったといわれる。

ウリ科の一年生のつる性草木である。つるは数メートル以上伸びて、葉腋には巻ひげがあり、物にからみついて草姿を支え、分枝性がつよい。果実の苦みはククルビタシンによるもので、品種改良によって最近の品種ではほとんどない。曲がりや肩流れの変形果は、過度の着果による栄養不足や高温、低温などの環境で発生するが、極端なものを除けば食味に遜色がない。

農業用ビニールの開発によって1954年ごろからトンネル栽培が一早く普及し、続いてビニールハウス、ガラス温室栽培が一般化して、周年生産されるようになり、施設栽培による周年供給が可能になった。現在、これらの施設栽培による生産は全量の60%以上に達している。

一年中出回るようになったが、旬は5~8月、肌の色が濃くて艶があり、疣(いぼ)がとがっていて刺さると痛いくらいのものが美味しくて良い。サラダ、酢の物など生で利用されることが多いが、生以外でも煮たり、炒(いた)めたり、漬物としても食べることが多い野菜である。

ナス(茄子)

ナス(茄子)

ナス科の1年草、原産地はインド東部で、歴史は非常に古く、紀元前5世紀には中国に伝えられ、5世紀ごろの書物に栽培法が書かれている。アラビヤ、アフリカ にも5世紀前後に伝播され、ヨーロッパには13世紀には伝わったが、ナスは好温性であるため、南ヨーロッパを除き冷涼な気候の国々には定着しなかった。

わが国では4~6世紀の古墳時代から栽培されていたようで、正倉院の古文書にも記録があり、最も栽培の歴史が長い野菜の一つである。『延喜式』(927年) には栽培から漬物加工まで記されている。ナスは品種改良がしやすく、古くから全国各地にさまざまな地方品種がしやすく、古くから全国各地にさまざまな地方 品種がある。一般的に東北、九州では長ナス、関西、北陸、甲信では丸ナス、関東では千成ナスが好まれている。

品種も多くいろいろな調理方法があり、とくに油と相性が良く、天ぷら、揚げ煮、漬物と幅広く利用されている。旬は5~9月、傷やへこみがなく、艶のあるもの、へたの切口が新しいものを選ぶと良い。

利用法の特徴として、ナスを漬物に用いている。他国では主に調理法であるためで、わが国のような小形の果肉のしまったものは発達しなかった。各種の漬物があるが、「ぬか漬」「からし漬」「みそ漬」が有名。とくに果皮の美しい黒紫色が好まれるため、漬ける時には釘(くぎ)や焼きミョウバンを入れ、変色を防いでいる。関西では、ナスビといっている。

この月のおすすめ品:ナス、新タマネギ、アスパラ、キュウリ

果物

ビワ(枇杷)

ビワ(枇杷)

バラ科ビワ属で中国が原産地。弥生時代の遺跡から出土しており、わが国での栽培は古いと推測されている。ビワといえば長崎の茂木が有名である。徳川時代に、長崎代官所に行儀見習いにきていた長崎県茂木北浦名の三浦シオが、唐人から贈られた種子を代官にもらい、茂木の地で育てたのが長崎・茂木のビワのはじまりである。

この茂木ビワを明治12(1879)年に、田中という人が、長崎県で茂木ビワを食べて、美味しかったので、千葉県の房総半島で栽培を奨励した。これが「田中ビワ」である。茂木ビワも、田中ビワも改良をくわえられ、現在のビワになっている。

長崎県の茂木ビワは5月下旬から6月上旬まで、田中ビワは6月上旬から中旬まで。千葉県の茂木ビワは6月上旬から中旬、田中ビワは6月中旬から下旬までである。

ビワの薬効としては、果実にはカロチンが多く含まれ、咳・痰に効果があり、種子にはアミグダリンが含まれ、利尿作用、健康増進等に効果があるといわれ、茶葉替りに用いる枇杷茶には、利尿効果、疲労回復、風邪の予防、食欲増進等に効果がある。

お寺などでよくビワの木をみかけるが、それはビワの葉がいろいろな病気に対して薬効があるということから、坊さんが薬として使用していたのが理由である。

この月のおすすめ品:甘夏ミカン、セミノール、清見、イチゴ

キウイフルーツ

キウイフルーツ

茶色の円筒形で毛が密生している姿がニュージーランドの国鳥キウイバードに似ているので命名された。もともとはチャイニーズ・グーズベリーという中国南部原産のスグリの仲間で、1906年ニュージーランドの学者が持帰り、改良されたのが現在のキウイである。

品種はへイワード、アボット、モンティー、ブルーノ等であるが、大半がへイワードである。出回り時期は、ニュージーランド産が5~12月、国産は12~4月である。
選ぶポイント(鮮度)は果色が均一で毛茸の破損がなく、軟化していないものを選ぶと良い。さわって少し軟らかさを感じる頃が食べ頃で、未熟のものは酸味が強 いので、リンゴと一緒にポリ袋に入れておくと、リンゴの発散するエチレンガスの働きで、2~3日で熟す。硬いものは暖かい部屋において少し軟らかくなって から、冷蔵庫で冷やして食べると良い(硬いまま冷蔵庫に入れても軟らかくならない)。

果物には身体のリズムを整える作用がある。キウイフルーツにはビタミンC、繊維分が多く含まれており、ビタミンCには壊血病を予防し、老化の原因といわれているフリーラジカルを消去する働きがある。

繊維分には便秘の予防や大腸ガン予防効果があるともいう。またタンパク質分解酵素も多く含まれているので、消化の働きを助ける。食後のデザートや飲酒のあとにぜひともおすすめしたい。

この月のおすすめ品:甘夏ミカン、セミノール、清見、イチゴ