7月の食材
鮮魚類
ハモ(鱧)
ハモは、ウナギのように円筒形で、ウナギ目ハモ科に属する。「麦藁蛸に祭鱧」とは、どちらも旬の時期を表現したもの。タコは麦藁のできる頃、ハモも夏祭の頃が一番おいしいという意味である。関西の夏はハモ料理で幕が明ける。大阪市中の夏祭をはじめ、「船渡御」で有名な天神祭や、京都の祇園祭は「鱧祭」と言われている。
ハモは「梅雨の水を飲んで美味くなる」と言うように、入梅時から脂がのり、身が柔らかくなる。夏から秋にかけての産卵期が旬になる。ハモを食べるのはおもに京阪神で、大阪湾では昔から漁獲されている。今でも漁村地域の夏祭には「ハモの押鮓」が御馳走という地域がある。
ハモの名称は、口が大きく、鋭い歯で貪欲に他の魚を食べるため、『和名抄』は「食む(はむ)」からできたと述べている。越前海岸から北の日本海海岸や北海道では「アナゴ」のことを「ハモ」と呼んでいる。
京都には昔から、大阪の雑喉場(生魚市場)から旬になると、「京送り」として船で積上っていた。ハモとタコは水から揚げても、すぐには死なず、2~3日は日持ちする。こうしたことから今でも夏の京料理にはハモ料理が欠かせない。
2000年の京阪神六中央卸売市場の生鮮ハモの取扱高を参考までに紹介する。
++2000年/京阪神六中央卸売市場/ハモの取扱高++
| 取扱量 | 取扱金額 | 平均単価 | |
|---|---|---|---|
| 大阪本場 | 617トン | 97,829万円 | 1,587円 |
| 大阪東部 | 614トン | 51,295万円 | 835円 |
| 大阪北部 | 239トン | 28,764万円 | 1,203円 |
| 大阪合計 | 1,470トン | 177,888万円 | |
| 京都 | 1,010トン | 143,418万円 | 1,419円 |
| 神戸本場 神戸東部 |
168トン 80トン |
30,200万円 14,200万円 |
1,796円 1,780円 |
| 神戸合計 | 248トン | 44,400万円 |
資料:各都市『中央卸売市場年報』より
この取扱高をみると、三都市のハモの賞味状況がよくわかる。
ハモを料理するのには、必ず「骨切り」が必要である。ハモは小骨が身に沿って首から尻尾まであり、専用の骨切包丁で細かく切っていく。1寸(約3センチ)の中に20~25の切身をいれる。その際、皮は切らずに残し、肉だけ細かく包丁を入れ、小骨を切っていく。
この調理は素人にはできない。そのため、西日本で漁獲されたハモは、生きている時に、首の後をしめ、京阪神の中央卸売市場に出荷される。これを仲卸業者が、料理屋、鮮魚商、量販店に卸売する。骨切りは小売の段階で消費者に販売する時点で行う。だから、鮮度はよく、玄人の骨切りだから、安心できるし、安全でもある。
白身の魚だが、脂肪が多く、味が淡泊である。ビタミンAが豊富で、ビタミンDも含まれている。皮にはコンドロチン(生体の骨、軟骨、血管、角膜などの結合組織にふくまれるムコ多糖の一種)が多く含まれている。
食べ方は、大阪では「ハモちり」と呼ぶ湯引き、照焼、吸物の具、酢の物、天麩羅、フライ等、料理法の幅は広い。秋になると「松茸の土瓶蒸し」が有名だ。
ハモの皮を使う「キュウリのザクザク」は、カマボコの原料としてハモの身をそいだあとの皮を少し焼き、キュウリを刻んで、二杯酢(酢に砂糖を少しと出汁をたす)をかけたもの。ハモの皮は、カマボコ屋等で小売している。
旬のハモがもつ「ハモの子」(卵巣)は、細粒で甘美、上品な薄味で煎炊きしたのを、大阪の旬の料理として喜ばれている。
もともと大阪湾に簇生して、大阪人にはなじみのあったハモは、大正期に事業を本格化した東シナ海以西の底曳網漁業によって、大量に漁獲されるようになった。 この底曳物のハモの「すり身」は長い伝統をもつ「大阪蒲鉾(かまぼこ)」の主材料として、独特の美味しいかまぼこが造られてきた。今でも上等のかまぼこにはハモを使用しているものが多い。このハモの「すり身」で造ったのが、夏の風物である「あんぺい」である。また、ハモの「すり身」は、料理屋の食材としても活用されている。
今年の入荷は、国内物では山口県、淡路島を中心に、大分県、 愛媛県から入荷する予定。最近は、中国物の入荷は少なくなってきた。韓国物の入荷は順調であるが、昨年より平均サイズが小さ目である。韓国物は、最近は国 内物も同じ位の値段であったが、最近では、国内物より高くなっている。これは水揚後の処理技術が年々向上し、身も柔らかく、料理屋の需要が強くなったので ある。
タコ(蛸・章魚)
タコ類は海産軟体動物の頭足綱八腕目の総称である。タコは頭、胴(外套膜)、足(腕)からなり、頭のような楕円形の袋が胴で、そこに内蔵が入っている。胴と 足の間の目の辺りが頭である。その腹側についている漏斗(じょうご)から海水を吐き出したり、排泄物や生殖物資、墨を排出したりと、排出口の役目をしている。足には2列の吸盤が並び、夜行性で、夜になると甲殻類や貝類を補食する。餌を捕らえると巣穴か近くの穴に身を隠して食べる習慣を利用したのが「タコ壷漁法」である。
マダコはハモと同様、大阪湾に生息している海生動物で、関西地方の人たちにはなじみが深い。大阪湾では、弥生時代の池上・曾根遺跡(和泉市・泉大津市)、四つ池遺跡(堺市)からイイダコ壷が出土しており、すでにこの時代から、イイダコを捕獲し、食味していたことがわかる。
世界のタコ類は200~250種類が分布しており、関西に流通し、食用になるのは次の4種類とされている。
(1)マダコ
タコ類のなかで、一番うまく、流通量も多い。胴の約4倍はある長い足には約240個の吸盤がついている。岩礁地帯や砂地に住み、日本近海では宮城県、新潟県以南より、台湾にかけて生息している。このほか世界中の温暖域にいる。
(2)イイダコ(飯蛸・望湖魚)
マダコ科で、北海道から東シナ海の浅海に生息している。体長10~30センチの小さなタコ。マダコに比べ、柔らかくて食べやすい。冬から春の産卵期に飯粒のような卵をもっている姿から、イイダコと名付けられた。
(3)手長ダコ
背中側の足が非常に長いのでこの名がある。日本海岸から朝鮮半島まで生息している。マダコ、イイダコより味が落ちる。
(4)水ダコ
タコ類のなかで、最も大型で胴の長さが約60センチ、全長3メートルになるものもある。関東から北海道、ベーリング海にかけて生息している。関西の市場にはめったに入荷しない。主に関東以北の市場で流通している。
夏至(げし)から11日目が半夏至(はげっしょ)と呼び、ちょうど田植えの終わる時期に当たるころで慰労会で骨休みをした。今年は7月2日になる。この日には河内(大阪府)、大和(奈良県)の農家は、タコを食べ、タコの八本足のようにイネが深く根を張るように祈願したとされる。別の説によると、タコには解毒 作用があるので、梅雨空から降って来た毒を流す意味から、梅雨のこの時期にタコを食べる習慣があった。ハモでも述べたが、タコの生存率は2~3日と長いので、大阪の雑喉場から淀川や大和川を船で河内や大和まで、また京都まで運ぶことが可能であった。
タコは生息環境にあわせて体色を瞬時に変色させられるが、これは体表に紫黒色、赤褐色、黄色の色素を持っているからである。茹でると赤くなるが、茹でたらアルカリ性の煮汁が出て、これがタンパク質を変色させ、紫黒色の色素が溶け、オンモクロールという赤色の色素が見えやすくなる。タコの旨みは、シコシコとした筋肉組織と、含量約1.5%になるベタインが関与しているからである。
タコの調理法は、内蔵をとり、何度も塩もみし、ぬめりをとってから、さっと茹であげる。大阪では大正期から雑喉場生魚市場で、茹蛸(ゆでだこ)を卸売するようになり、小売屋、料理屋、鮓屋、仕出屋で商っていたので、生タコを調理する必要がなかった。
食べ方は、マダコは主に茹でて造りや酢の物、鮓種に使う。生のまま、辛子酢味噌和えなどで食べるが、洋風にサラダやオードブル、バターソテー、マリネにしてもよい。この他、タコ類は、生干しや干タコ、塩タコなど、地域の知恵で造った塩干品が多い。
最近の生タコは7月に入ると、山口県、香川県、淡路島からの入荷が多くなり、値段も去年と変わらない見通し。
量販店等で売られている茹タコは、大部分が輸入品である。大西洋の西アフリカのスペイン領カナリア諸島のラスパルマス港を基地にして、1960年代から日本の漁業会社が冷凍タコの搬出をはじめ、その後は、韓国船、スペイン船、モロッコ船から輸入をはじめたが、今では日本漁船は引揚げ、これら3カ国の輸入品で ある。
塩干魚類
ベニザケ・トキザケ(紅鮭・時鮭)
ロシア200海里内で操業していた「本ちゃん」ものの沖ベニザケとトキザケ漁の終漁が近くなっている。本年は全体的に漁模様があまりよくないようであった。
昨年の在庫も少なくなっており、新物の相場が心配である。相場の値段は、美味しさだけでなく、入荷量と鮮度次第である。サケについては、すでに6月に掲載したので参考にしてほしい。
ウルメ丸干(潤目丸干)
ウルメイワシの丸干が旬になる。しかし、漁模様があまり芳しくないようだ。
今のやや脂ののった物は若干しで美味しい。上干物(じょうかんもの~よく乾燥したもの)には、これからの無脂物がつかわれる。若干しは日持ちがしないが、脂のある美味しいウルメ干しがすすめられる。
ウナギ(鰻)
日本人とウナギの付合いは、『万葉集』に「石麿(いしまろ)に われ物申す 夏痩(や)せに よしといふものぞ むなぎとり召せ」と大伴家持(おおとものや かもち)が詠っている時分からである。土用丑(うし)に食べる習慣になったのは、近世中期の平賀源内(ひらがげんない)が宣伝用に書いたものがはじまりと されるが、いろいろな説がある。
ウナギの種類は世界で20種ほど確認されているが、食べて美味しいのはマウナギ、ヨーロッパ・ウナギ、アメリカ・ウナギ等の数種類である。お隣の中国では、かつて日本にもいた「タウナギ」が食味されている。
ウナギは"サケ"の逆で、産卵のため海に下り、生まれた稚魚は川に戻って成長する。しかし、その産卵の場所や詳細は一部だけしかわからず、いまだなぞの部分が多い。
海で産卵されると、稚魚になって川に戻り、淡水域で7~8年ほどで成長する。成魚になると産卵のため川を下って海に戻る。エビやカニを餌にしている天然魚はあっさりとしているが、市場に出回っているウナギの蒲焼(かばやき)の大部分は養殖ウナギである。養殖ウナギは人工飼料で育てるため、柔らかくて脂濃く、皮が厚くて固い。日本の養殖ウナギは、明治10年代にはじまり100年を経過している。
最近、台湾、中国から大量のウナギの冷凍蒲焼加工品が輸入するようになって、安価なウナギ蒲焼製品が市中に出回るようになった。今年になってウナギを「セーフガード」の対象にするよう提案されている。国内養殖業者にとっては死活の問題になっている。
今年の丑の日は7月25日と8月6日の2回ある。ウナギには、脂肪分、ビタミンAが多く含まれ、とくにビタミンAは一日の必要摂取量を3分の1尾で充たすことができるほどだ。
蒲焼に勝る料理法はないが、関東風には白焼がある。この他に鰻巻、うざく、八幡巻、肝吸、うな茶漬等、古くからの料理法がある。外国の料理法を紹介すると、イタリアでは、ワイン煮、ムニエル、リゾット、ゼリー寄せ、フライ等、ベルギーは、香草煮(アンギーユ・オ・ヴェール)、スペインは、稚魚(シラス)のオ リーヴ煮(アンギュラス)、ドイツは、干スモモと煮込みスープ(アール・ズッペ)、イギリスは、燻製、フランスは、テリーヌ、バター焼、パイ、ワイン煮、 スープ等、欧州各国でそれぞれ独創的な料理法を考案している。
ヤマトシジミ(大和蜆)
島根県の宍道湖(しんじこ)の汽水域(淡水と海水が混じっている水域)に生息しているヤマトシジミがシジミの代表的なものである。夏は産卵のため土用のころが一番美味しくなる。シジミにはミネラルを多く含み、旨み成分は日本酒と同じコハク酸である。さらに赤いビタミンといわれるB12も多く、これは肝臓に大 変良く薬膳料理にも使われている。
シジミは身体を冷やし、肺臓、肝臓、腎臓に良 く、とくに酒毒を分解し、黄疸を直すといわれている。料理法は色々あるが、代表的なものは味噌汁で、味噌のアミノ酸との相乗効果で味が引き立つ。他には、すまし汁、スパゲッティ、時雨煮、卯の花和え、かき揚げ、シジミ炊込みご飯等、各地各様の料理法が考案されている。
野菜
スイートコーン(玉蜀黍・トウモロコシ)
イネ科の一年草で、原産地はメキシコから南アメリカ北部地域とされるが、原種が不明であるため、起源については南米アンデス山地とメキシコの諸説がある。紀元前2000年ころから栽培されていたらしい。ヨーロッパへはコロンブスが持帰り、16世紀前半にはヨーロッパ各地に広がり、同時期にはアジアにも伝播されている。食料用、飼料用として世界中で栽培され、コムギ、イネとともに世界3大穀物の一つである。
スイートコーンはトウモロコシの一種、甘味種で未成熟で食べる。日本には1579(天正7)年にポルトガル人が長崎に伝えたが、これはスイートコーン以外のトウモロコシであり、本格的にスイートコーンを栽培したのは、明治に入ってアメリカから栽培に適した北海道に多数の品種が伝わってからで、これが日本で栽培される品種の基になっている。
野菜として出回る甘味種(スーパースイート系)は7月から9月が旬である。収穫後鮮度が急速に低下し、甘みも半減するので、早く処理すること、栄養価はデンプンが主成分で糖度が高く、他にビタミンB1、B2も多く、栄養価の高い野菜である。
トマト(蕃茄)(赤茄子・アカナス)
ナス科の一年草で、原産地は南米アンデス山地のペルー、エクアドル、ボリビアの高地とされている。紀元前から栽培されていたのが、インディアンの移住とともに、中央アメリカ、メキシコ方面に伝えられる。ヨーロッパにはコロンブスによって15世紀の終わりに持込まれた。16世紀にはイタリアの栽培技術が発達 し、その後、イギリス、フランスで発達し、のちにアメリカに伝わる。
日本に渡来したのは18世紀の初めといわれる。最初は観賞用で食用になったのは明治中期の中頃からといわれる。別名アカナス(蕃果・ばんか)とよばれた。全国各地で栽培された。ハウス栽培など1年中さまざまな種類のものが出回っているが、露地物の旬は夏である。
「医者いらず」のことわざがある様に、トマトが熟すころには医者にかかる者が少なくなるという意味で、それほど健康に良い野菜である。トマトの赤い色素は、リ コピンでカロチンではないが、ビタミンCとAが比較的多く、カリウムも含まれる緑黄色野菜である。生で食べるほかに料理の重要な素材である。生食が主体だ が、ジュース、ピューレ、ソース、ペースト、調味料を加えてトマト・ケチャップと多くの加工品がある。
果物
モモ(桃)
バラ科に属する落葉喬木。原産地の中国では3000年以上も前から栽培されており、不老長寿の果物として珍重されてきた。日本では明治初期に中国から入ってきた"水蜜桃(すいみつとう)"が改良され、現在に至っている。
白鳳系と白桃系に大別され、成分は88.7%が水分であるが、繊維成分のペクチンを多く含み、便秘解消に効果があり、その他血圧を下げ、コレステロールを減らす働きもある。最近では、インスリンの働きを良くする成分が含まれていることも明らかになり、糖尿病等の予防効果があることもわかってきた。
選び方は、形は縦と横の釣合いがとれて、全体がふっくらと丸みを帯び、まんべんなく色付き、鮮やかな赤色(白桃果は異なる)のあるもので少し大玉が良い。
モモは日持ちがしないので、できるだけ早く食べる方が良く、冷蔵庫での保存はできるだけさける。冷やしすぎると味がわからなくなるので、1~2時間程度冷やすと良い。
頭の部分が、一番甘みが強いので、切り分ける時は、縦にナイフを入れるのがおいしい食べ方である。
"旬"感じさせる果物として贈答用に最適である。特に今年のものは甘みが強く、おいしく仕上がっている。主な産地は、和歌山、山梨、福島、長野である。
ブドウ(葡萄)
ブドウ科の果物で、つる性の落葉植物であり、世界で最も生産量の多い果物である。原産地はコーカサス地方から黒海沿岸、地中海沿岸にかけての地域といわれて おり、古くからの栽培が行われており、ワイン、干ブドウとして作られ、5000種以上の品種があり、日本には平安時代に中国から渡来している。
日本で一番古くから栽培されていたのは"甲州ブドウ"で、白ワインの原料として有名である。黒(紫)、青(白)、赤の3種類の果皮の色があり、それぞれの味や品質に特徴がある。
黒い品種は濃厚な味で「巨峰」「ピオーネ」「藤稔」が代表的な銘柄で、いずれも大粒のブドウである。青い品種は「マスカット・オブ・アレキサンドリア」で、 香りの良さと歯ざわりの良さが魅力的。赤い品種は「デラウェア」が代表的品種で、小粒ではあるが、甘みは最高である。最近ではデラウェアよりやや大粒の 「キング・デラウェア」の人気も高まってきており、その他、やや赤味の強い「甲斐路」がある。
ブドウに含まれる主成分は糖質で15.7%含まれている。糖質はブドウ糖や果糖で吸収されやすく、疲労回復に効果があるとされている。
ワインは古くから消毒薬として利用され、殺菌、抗菌作用がある。最近では、赤ワインには血液をサラサラにする働きがあり、動脈硬化の予防等に効果があるということがわかってきた。
選び方は、軸が青く新鮮で、粒が整っており、張りのあるものを選ぶこと。果皮の表面が白いのは果粉と呼ばれるもので、水をはじいたり、病気等から果実を保護するもので害ではない。