9月の食材
鮮魚類
サバ(鯖)
スズキ目サバ科の海水魚で、マサバとゴマサバの2種が日本近海に回遊している。サバ科にはマグロ類やカツオ類も属し、サバとは近縁である。
涼しくなると旬の魚で、サバとは古くから日本人と付合ってきた。卸売市場ではマサバのことをサバと言うことが多い。日本列島の時期に違いがあるが、どこででも漁獲される。もともと世界中の温帯海域を回遊しており、海水温が低下すると、季節的に南北を回遊している。日本近海の産卵期は3~8月で、体色は背部が青灰色、腹部は銀白色をしている。背側には黒い縞模様があり、腹部には黒い斑点がなく、身体の断面はやや偏平である。
代表的な赤身の魚で、筋肉中の血合肉が10~15%を占め、この血合肉に鉄などの無機成分や、ビタミン類が豊富に含まれている。
旬は秋で、「秋サバは嫁に食わすな」と嫁いびりの代表的なことわざになっているが、秋サバは脂がのって一番旨い。サバの見分け方は、目がよどまず澄んでおり、体色が鮮やかで光沢があり、身が堅くしっかりして鰓(えら)の赤いものがよい。旬のサバは、焼いたり、煮たり、揚げたりして食べる。生臭さをとるため、十分塩を振っておくことが大事である。
今秋のサバの入荷は、千葉県、石川県、九州方面から前年並の予想。
最近はノルウエーを中心に、大西洋サバが輸入するようになった。ごく最近ではこの輸入サバを中国等で加工してから、日本に輸入されている。
タチウオ(太刀魚)
サバ亜目タチウオ科。タチウオは太刀魚と書くように、細長く平たい銀白色である。泳ぐ時は頭を上にして直立し、群れて泳いでいる。立泳ぎするので「立魚」 とも書かれた。通常は海底にいて背鰭(せびれ)を小刻みに波打たせて、魚が上方を通るのを待っていて、魚などが通ると身体をくねらせて鋭い齒で襲う。大きいものは1メートルを超える。暖海性の魚で、梅雨明けのころに夜間に浮上してくる習性があり、釣魚としても人気がある。
今秋の入荷予想は、紀州(和歌山県)、徳島県を中心に、大阪湾、播磨灘(兵庫県)の釣物が主体である。
体表には鱗(うろこ)がないが、美しい銀白色をしている。この銀色は有機塩基のグアニンによるもので、鮮度が落ちると剥(は)げてしまう。このグアニンを 模造真珠の表面に使っていたこともある。大阪府松原市を中心に模造真珠が盛んであったのは、大阪湾のタチウオのお蔭であった。
春から初夏にかけて旬であるが、海域によって海水温が低くなる秋口に脂がのってくる。小骨が多いが、淡泊な白身で、鮮度のよいものはうまい。高鮮度のものは造りにするし、上物の酢の物になる。その他、塩焼・照焼・南蛮焼などの焼魚にされるが、蒸物、煮付、揚物等多様な利用方法がある。小型のタチウオは、小骨が軟らかいので「背越し」に刻んで酢醤油で食べる。
模造真珠の銀色の体皮をとったあとは、蒲鉾(かまぼこ)の原料にも使われる。
ツバス・ハマチ
ツバスはブリの幼魚であり、ハマチは若魚である。ブリはスズキ目アジ科に属し、温帯性の回遊魚で日本各地の沿岸に生息している。関西市場ではモジャコ(養殖用の稚魚)、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリと名前が変わるので、出世魚という。
5月から6月に産卵され、孵化したモジャコというブリの稚魚は、8月末から9月にかけてツバスという幼魚になる。大阪市場には8月末から10月までは天然 ツバスが入荷し、11月以後になると1キロ以上の天然ハマチになっている。年末の忘年会の造り用として、天然ハマチが安い食材になっている。以上は天然魚 のことである。
1960年代から急速に発展してきた養殖魚の大半を占めるハマチについて紹介する。日本の海面養殖魚で、ハマチ養殖がはじまったのは、昭和の初め頃から香 川県大川郡引田池で研究され、本格的になったのは1960年代である。瀬戸内の東部海域から全国に普及するようになった。全国的なハマチ養殖の普及で、マ ダイ、ヒラメなど各種の養殖生産に発展するようになった。
シズ・ウオゼ
スズキ目イボダイ科(疣鯛)の海産魚。関西や九州の業者間ではシズまたはウオゼといっているが、関東ではエボダイという。近縁にメダイがあり、関西の味噌 漬の主要魚種のマナガツオとも近縁という。卵偏平型で銀白色の鱗(うろこ)が輝き、身質は軟らかい。太平洋沿岸では宮城県松島湾以南、日本海側では男鹿半島以南から東シナ海に分布している。韓国・台湾・東シナ海・アメリカの太平洋岸にいる。
沿岸部のやや深い海底に生息し4~5月に産卵する。初夏から秋にかけて旬になり、美味しい。鰓蓋(えらふた)の上の方に暗色の斑紋があり、これが灸(きゅう)の跡に似ているので疣鯛(いぼだい)と名付けられたという。成長すると消える。
身は白身で、淡泊で上品な味をしている。調理は味噌漬、塩焼、煮付、ムニエルにする。塩干品には干物、味醂(みりん)干などがある。
体表から粘液を出して、バターを塗ったように見えるので、英名ではバター・フイッシュと呼ぶ。
鹿児島県、熊本県天草、長崎県、愛媛県八幡浜、瀬戸内(山口県)、淡路島、三重県から、入荷から入荷する予定。
ワタリガニ(渡蟹)
大阪湾を中心に、古くから生息しているのがワタリガニであり、通常はガザミという。ワタリガニは十脚目の短尾類の一種で、食用のカニ類には、海産物ではケガニ・ズワイガニ・タラバガニ・ハナサキガニ等がある。
ワタリガニの第四歩脚(最後の脚)が鰭(ひれ)のような役割で水中を泳ぐ。これを遊泳脚といって、巧みに櫂(かい)のように使って泳いでいる。ワタリガニ は泳ぎながら小魚や小動物などの餌を捕ったり、ライバルから逃げたりできる。こうして水中を泳ぎまわったり、群をつくって広い範囲を移動するので「ワタリ ガニ(渡蟹)」というようになった。 甲羅が横に長い菱(ひし)形をしている。体色は青緑色をしており、ハサミが長い。北海道から九州、中国沿岸まで分布している。
昔から大阪湾ではよく獲れていたが最近では皆目になり輸入品にたよっている、9月14日と15日の岸和田のカニ祭は有名である。
今年の入荷予想は、国内物は大分県、山口県のものが中心で、輸入物は韓国産になる。9月一杯はオスで、メスの入荷は10月半ば以降になる予定。年々漁獲量 が減少し大きさも小さくなっている。今年は空梅雨であった影響から水揚量も少ない上、韓国内の需要が伸びてきており、相場は強含みになる予想である。
ワタリガニには、100グラムに必要な亜鉛の約2分の1が含まれている。またタウリンが豊富でコレステロールの増加や、肝臓病や心臓病の予防、視力回復に効果がある。
塩干魚類
塩ベニザケ(紅鮭)
今まで何遍かふれてきたので、簡単にするが、アラスカ、カナダの新物の入荷が本格化する。サケ目サケ亜目サケ科の母川回帰性で、生涯の大半を大海原で生活する。
今年の新物の味はぐっと良くなり、値段も前年並に落着くようだ。
塩サンマ(汐秋刀魚)
秋の月夜に魚体が刀のように見えることから「秋刀魚」と書くようになった。骨離れのよい食べやすさと安価が魅力で、季節物としてサンマが喜ばれ、大阪では汐サンマがずっと以前から好まれてきた。
8月20日から北海道沖での40トン以上のサンマ棒受網の大型船の操業が解禁になり、本格化して9月には塩干屋や、量販店、百貨店の魚台に並んでいる。
戦後の統制解除から大阪市場では、北海道、東北方面で水揚げされたサンマが、開サンマの原料として加工産地に再出荷されるのと、中国、四国、九州の各地の卸売市場に転送されてきた。大阪圏の消費は、汐サンマが主力で、すでに量販店、百貨店で売出している。
サンマ開(開秋刀魚)
生サンマと違って、サンマは年中弁当のおかずとして珍重されてきた。この給食用サンマは、大半が開干サンマである。9月から10月頃から本格化してくる。
生や汐物と違い、焼いてもあまり煙もたたず、脂も飛ばず、始末がよい。秋の新米との相性がよく、日本人の食文化の一つに数えられている。
淡水魚介類
モズクガニ(水雲・海蘊・川蟹)
北海道から沖縄にまで日本全土に分布し、旬は秋から初冬(産卵のため川を下る)で一番美味しい。またこの時期は彼岸、秋祭、菊人形と重なり、需要が多くなる。モズクカニは、大きさの割に身が多く、栄養的にもビタミンA、B2、カルシウム、リン、鉄分などが豊富に含まれている。
市場にはオス、メスを大きさ別に分けて入荷し、メスの産卵前の子持物は高値で取引される。
食べ方は、塩茹にした身をほぐして二杯酢、三杯酢、また甘辛く煮込むのが一般的であるが、このモズクカニの特徴ある料理法として、殻ごと細かく砕いて味噌汁に入れると、非常にコクのある味が出る。
各地に色々な食べ方があるが、その一つに、福島県に「ガニマギ」といって、殻ごとすり潰し、裏ごししたものに山芋をすり下ろし、ねぎと味噌汁をかけて食べる。
川カニの仲間の上海ガニ(中国モズクカニ)は9月中旬~12月頃に入荷する。上海ガニの外見的な違いは、甲羅上部の左右の突起が尖っており、第四対目の脚のツメが、川カニは平べったく幅広いが、モズクカニのは他のツメ同様に細くなっている。
ホタテ貝(帆立貝)
房総半島から能登半島以北の寒い地方の代表的な2枚貝である。有名なのは北海道、青森県、岩手県、宮城県の東北から北海道で盛んに養殖されている。その生産量は国内の需要が100%まかなえる数少ない食材の一つである。
ホタテ貝の由来は、殻のまま焼いて貝が開いた形が帆立船をおもわせることから、「ホタテ貝」と呼ばれるようになった。
旬は秋から春までといわれていたが、現在では養殖産地の努力で一年中美味しく食べられる。栄養的にも、低カロリーのタンパク質、カルシウム、ビタミンB、タウリン、鉄分等が含まれており、動脈硬化の予防、神経や心臓、目や脳の発達を助け肝機能の促進に効果がある。
食べ方は、ホタテ貝の特有の甘み、旨みがあり、和風、洋風、中華風と幅広く使われている。貝柱の造り、殻のままの焼貝、ホタテご飯、串焼、かき揚げ、グラタン、炒物、ミルク煮、サラダ、フライ、干貝柱、燻製など色々あるので試してほしい。
野菜類
サトイモ(里芋)
サトイモ科の一年草。インド、ネパール、マレー半島、中国南部方面が原産地 とされている。中国には紀元91年の『史記』に記録があり、現在の親芋や子芋の品種がすでに『斉民要術』(560年)に掲載されている。日本には南方から 移住してきた人たちと一緒に渡来してきたようで稲作以前らしい。稲作がはじまったのは弥生時代だから、それ以前は主食用として栽培されていたようであり、 その名残りが日本各地に風習として残っている。日本での記録では『萬葉集』『延喜式』(928年)『倭名類聚鈔』(931~938年)『風土記』『正倉院 文書』にある。
正月の雑煮、中秋の名月(今年は10月1日)は別名を芋名月という。京都の北野天満宮の芋茎(ずいき)神輿のほか神事とも深く関わっている。
現在主流になっている子イモ用品種は大部分が3倍体(親イモ用は2倍体)であるので、種子繁殖ができず、繁殖は子イモを種イモにして栄養繁殖している。そのため古い野菜の割に品種数が少ない。
種イモを植えつけると、葉身と葉柄を地上部に出し、草丈は1メートル前後に生長する。生育が進むと、葉柄の茎部が肥大して親イモになり、親イモには沢山の 芽が出て、大きくなると基部が肥大し子イモになる。子イモをあまりつけずに親イモだけが肥大するのは親イモ用品種である。子イモから孫イモができる。この子イモ、孫イモが沢山肥大するのが、子イモ用としてよい品種である。子イモ用の親イモは食用にならない。子イモを肥大させなければ親イモも良質になる。
主な品種の中で、よく知られている「石川早生(わせ)」を除くと、大部分が中国から伝来してきたものである。石川早生は、19世紀に大阪府南河内郡石川村で発生した変異個体が品種として定着したものである。
サトイモは春に種イモを植えて秋に収穫するので秋が旬であるが、イモは貯蔵性が高く、夏の端境期を除けば、1年中出回っている。旬は8月から9月になる。
ぬめりに含まれる酵素ムチンは消化酵素を含み、解毒作用をもつ。内蔵を強化し、便秘解消に役立ち、疲労回復に効果的である。煮物、汁物、関東煮、油揚、芋飯などに利用される。
ナンキン・カボチャ(南瓜)
ウリ科の一年生果菜、蔓性で雌雄異花、夏に黄色の花をつけてのちに結実する。世界各地で栽培される代表的な野菜。日本種の原産地はメキシコ南部から中南 米、遅れて渡来した西洋種は南米の高原地帯が原産地。日本へは天文10(1541)年にポルトガル人らよってもたらされたという。日本で栽培されている種 類として、日本カボチャ(和種)、西洋カボチャ(洋種)、ペポカボチャ種の三種がある。
日本カボチャは中央アメリカが原産地で、戦国時代末期に伝来した。京都の鹿ケ谷、大阪の勝間などがあり、ペポカボチャではソウメン(金糸)南瓜、ズッキーニ等、現在栽培の主流は西洋種であり、国内、輸入を含め、一年中出回っている。
和洋中どの料理にも使うことができるし、緑黄色野菜としてビタミン類が多く、A、B1、B2、C、カロチンが含まれている。西洋種の旬は5月から10月である。
果物類
20世紀ナシ(20世紀梨)
1895(明治28)年頃、千葉県(松戸市)で実生したものを移植して栽培された青梨の代表品種で、8月下旬から10月上旬が出回り時期である。果皮が薄いので傷つき易いが、関東以北で好まれる赤梨に比べると日持ちが良い。
最近、20世紀ナシの後継品種としてゴールド20世紀ナシが開発され、期待されている。 選ぶ時は、手に持ってずっしりと重いもので、横に少しはり、腰の低いものが美味しい。食べ頃は果皮色が緑色から黄色に変わる頃で冷やしすぎはよくない。
カリウムを含んでいるので利尿効果や、むくみをとる効果もある。独特のシャリシャリ感はペントサレ、リグニンという成分でできている細胞によるもので、腸を刺激して、排泄活動を活発にする。身体を冷やす効果があるので、風邪等の時に食べると良い。
キョホウ(巨峰)
日本独特の品種で、粒と房が大きく、果皮は紫黒色で、9月から10月中旬頃まで、露地物が出回る。表面の白い粉はブルームとよばれ、果粒を保護する働きの もので無害である。 選ぶ時は果軸が太く、緑色で果皮の色の濃いものが良い。糖度は18度以上で甘みの強いブドウである。ミネラルが豊富で鉄分、カルシウム、カリウム等がまんべんなく含まれている。ブドウの甘さはブドウ糖と果糖で、エネルギー源となる。
ジベレリン処理による種なし巨峰もあるので、好みにあわせて選ぶと良い。おもな産地は長野県、山梨県、福岡県、愛知県で1945(昭和20)年に新種として発表された。