「高山牛蒡」
深い味わいと香りそして独特の食感
大阪が誇る馴染みの伝統野菜
キリシタン大名、高山右近の生誕地として知られる豊能郡高山地区で、今から250年以上前の江戸時代に農学者の小西篤好の手によって栽培が始まったのが、高山牛蒡です。
土を1mほど掘り起こして、堆肥にこの地区特有の真菜をすり込むという設計の栽培方法や在来種子の採種の方法は、代々の教えの元、今も生産者の皆さんに受け継がれています。また高山牛蒡は、換金作物として重宝がられて、京阪神を中心に出荷され、多いときには10ha以上もの作付けが行われていたという大阪が誇るべき馴染みの伝統野菜なのです。
高山牛蒡の特徴は、見た目は色黒で少し不細工ですが、香りが良く。その味は、煮ても柔らかくまったく筋が残らないということから人気が高く、大阪の人々の間では「高山牛蒡を食べなんだら正月を越せん」とまでいわれています。
日頃の作業の中で養われた勘そして力
野菜の栽培に適したこの高山地区の恩地では、真菜はもちろん栄養度満点の様々な種類の野菜が生産されています。この土地は、その中でも特に牛蒡の生産が適しているようで、生産者の皆さんは、手間と時間をかけて、さらに日頃の作業の中で養われた勘と力を注ぎ込み、この最高の高山牛蒡というブランドを守り続けているのです。
「10cmくらい掘らなければ頭は出ませんから...そこから頭を掴んで引っ張るので、完全に頭を出してやらないといけないんです。息を止めて、グッっと力入れて慎重に引っ張るんで、心臓を悪くした人もいたほどですわ。それくらい作業はたいへんなんですよ」と高山生産者組合の副組合長、北浦正義さんは身振り手振りを入れてその作業の様子をお話下さいました。「土地を返して、まず牛蒡の頭出す者、それを鋤く者、そして掘り出す者と3人で分業にしたら早いんですわ」。労力が必要となる牛蒡の栽培や収穫作業についてご自身の工夫について語って下さったのは生産者の下浦敏子さん。「今は、トラクターでパァーっと鋤いたりできますから随分作業が速くはなりましたけれど、それでもやっぱり、慎重にやっていかなければいけませんから、手間暇かかるんです牛蒡は...」高山生産者組合の組合長、新谷龍一さんのお話からは、進展する農作業の機械化の中でも、牛蒡の栽培には、牛蒡だけに適した特別な心持ちが常に必要であるという繊細なる思いを伺うことができました。
生産者の思いやりと暖かい愛情で育んだ旨味
高山牛蒡は、4月に種が蒔かれて、その収穫は11月末から掘り出し、だいたい正月前が旬になるそうです。食べ方といえば、お馴染みのきんぴらが好まれているようですが、正月には酢ごぼうとしてお節料理の重要な食材として味わうことができます。
独特の食感そして深い味わいと香りの高山牛蒡。現在の生産者の数は、高山地区の住民約220人の内、20人を切っているとのことです。また高齢化も進み平均年齢70歳を越え、労力の必要な牛蒡の栽培や収穫をこの少数の人々の魂が守り続けているのです。
そんな人々の思いやりと暖かい愛情により、今日も高山牛蒡は、最高に肥沃な土地に根を深く深く伸ばし、太くて旨味が詰まった独特の風味を育んでいくのでしょう。