パンに夢をつぎ込んで
「鳴門屋製パン」
昭和9年の創業
大阪市内にぐるりと円を描くJR環状線。その桃谷駅のホームからは、「鳴門屋製パン」という大きな看板が目に入ります。電車の中からでも見えるこの看板に、見覚えがあるという人も多いのではないでしょうか。ここ、桃谷駅前の商店街にある「鳴門屋・桃谷本店」は、1958(昭和33)年に開店されたリテイルベーカリーです。1階がベーカリー、2階がサンドイッチハウスとして営業されており、毎日多くの客で賑わいをみせています。
「鳴門屋製パン」の創業は1934(昭和9)年。先代の長江清市(きよいち)さんが東成区片江町に開店したパン製造販売の個人商店がその始まりです。その昔5000年前、エジプトで誕生したといわれるパンに魅了された清市さん。世界のどの国にも劣らないほどのパン消費量を誇る日本ですが、当時は現在のように小売店の数は多くありませんでした。ましてや昭和初期のこと。第二次世界大戦のために、食糧営団に統合された時期もあったそうです。
各地に工場や店舗を構えるようになる

焼け野原となった大阪の町でパンの販売を再開したのは1949(昭和24)年のことでし た。パンという食べ物に強い思い入れを抱いていた清市さんは、戦争で途切れてしまったその夢に向かって再び進み始めたのです。場所は現在の桃谷本店のすぐそば、生野区勝山。その後、町の復興とともに支店の数も増え、1956(昭和31)年には洋菓子部門を発足させます。そうして清市さんが始めた個人商店は、各地に工場や店舗を構える「鳴門屋製パン」として多くの人々に親しまれるようになったのです。
焼きたてのパンを味わえる空間が魅力

パンやケーキを通して人々に夢を届けたいという清市さんの願い。そんな思いがより多くの人々に伝わるよう1979(昭和54)年、飲食部門を発足。ベーカリーに併設されたサンドイッチハウスは「ジミー」と名付けられました。自慢のサンドイッチ はもちろん、ベーカリーに並ぶ焼きたてのパンを味わえる空間です。現在でこそ喫茶コーナーを併設するベーカリーは多くなったものの、当時としてはこのような店舗は珍しいものでした。美味しいパンやケーキを届け、それらを味わいながらゆったりとした時間を過ごしてもらう。清市さんの思いから実現した「鳴門屋」、「ジミー」は、現在も地域のオアシスとして多くの人々に憩いの時を提供しているのです。
所在地/(桃谷本店)大阪市生野区勝山北1-1-2電話/06-6718-1001