「緑一」
永遠につき合っていきたいお酒

緑一

銘酒造りに最高の環境で

落語など上方の伝統芸能の保存に積極的な池田市。冷えの病には新しい猪の肉を食べると良いと教わった男が、池田の山猟師六太夫の所へ大阪の丼池筋から淀屋橋、お初天神を通って服部、岡町と寒さの中やってくるという上方噺の十八番「池田の猪買い」の舞台としてもお馴染みです。この噺から池田の町は極寒の山深いところというイメージが伝わりますが、猪名川を沿って能勢からの冷たい風が吹き下ろしてくるこの寒さこそが、酒造りにとって最高の環境を整える礎となっているようです。

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整備された道に面しノスタルジックな景観を見せる栄本町。その一画の路地を入ると、凛とした瀟洒な佇まいのお屋敷が見えます。玄関には春の季節を彩る見事な梅の木が立ち、格子戸を静かに開けると上品なお酒の香りに包まれます。こちらが池田の銘酒『緑一』でお馴染みの吉田酒造株式会社です。

繰り返すことで守られる永遠の味と香り

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吉田酒造は1697(元禄10)年に加茂屋平兵衛によって創業され、今日に至るまで約310年も営み続けられている酒蔵で、現在は社長の吉田昌弘さんがその伝統を守り続けていらっしゃいます。

「実は、阪神淡路大震災の時に、蔵やこの辺の建物がみんな壊れてしまいました。まぁ明治10年の火災後建てたところだけは残ったんですけど、その時ばかりはどないしょうか思いました」震災当時を振り返りそう語る吉田社長。しかし大切な命の井戸だけは惨状を逃れ、全く無傷でした。その気候や風土と共に酒造りに適した良い水を守れたことで『緑一』のブランドは先祖の思いとその伝統を継続することができたのです。

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「そもそもお酒というのは、江戸時代の文献とか調べてみますと、だいたい職人さんが日当をもらってきて、それで家族を食べさせて、残ったお金で1合か2合買って飲んだらしいですから、そもそもそんなに贅沢なものやなかったと思います。いわゆる庶民の楽しみですわなぁ」。そんな庶民の素朴な喜びを満たそうと味にこだわりそしてそれを守るために、吉田酒造では代々様々な苦労や工夫が施されてきたようです。「特に蔵人の苦労はたいへんなもんです。基本的に彼らは極寒の時分に作業をするんですけれど、それ以外の季節でも、もし温度が下がっていたら、お湯や電熱器を使って温めなあかんですし、今度は暖冬であかんという時は水や氷を使って冷やしてみたりそんな慎重な作業が毎日続くわけですわ」。様々なチャレンジをすることで未来の日本酒を考えることも重要なのでしょうが、やはりこういった日頃の繰り返すこだわりこそが『緑一』ブランドの永遠の味と香りを守っているのでしょう。

日本酒の特徴は飲むだけでなく何にでも使えること

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『緑一』の緑は、澄んだ色(緑色)を意味し、一は、池田の地が清酒の発祥であるということを表わしているのだそうです。そのようなプライドを背負ったブランド名を持つ銘酒ですが、その数ある中で吉田社長のお薦めは原酒だそうです。「これやったらどんな飲み方もできます。グラスに大きな氷を入れておいて、しゃべってたら溶けてきますやん。それで薄まって飲んでも原酒は全然旨い。冷蔵庫にギンギンに冷やして飲んでも喉ごしがよろしい。これ飲んで自分の味わい方を探すのも良いでしょうなぁ」。贅沢な本来の香りと味を、いろんな飲み方で戴けるということ、これが『緑一』の原酒の特徴といえます。

日本酒は、飲むだけでなく料理にも使えて、また化粧水としてお猪口にちょっと一杯のお酒を風呂上がりの体にすり込むと綺麗な肌が保てるとのことです。「これだけ何でもかんでも使えるお酒って日本酒だけとちがいますかね」

お酒は、人類の歴史とともに始まった飲み物といわれています。古くから優れた文明の地には必ずその土地の気候や風土にあった良質のお酒が生まれていました。日本は、縄文の時代から稲作が行われ、その頃から人々は米を原料とするお酒を造り味わっていたと想像できます。また日本には独特の四季があるということで、その季節ごとの景観や行事、そこには必ずお酒があり、人々はお酒を介して溶け合い順応して行く......。こういったお酒の楽しみ方は、日本酒の持つ性質なのかもしれません。

自分の口に合えばそれが一番良いお酒

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「けれどね。最近宴会とかで特に若い女性はお座敷に靴を脱いで上がるといったことを嫌がるようになりました。忘年会や新年会でも洋食のレストランとかでね。そんな中で日本酒を戴くという環境も変わってきたんやないかと思うんです」と最近の日本酒の扱われ方に疑問を抱く吉田社長。「それと日本酒のあての料理は、結構手間かかるんです」。飲みながら食べるという現在の習慣の中で日本酒を戴くためにはその周囲の食の状況も鑑みる必要があるのでしょうか......。

それではと、理想的な日本酒の飲み方を吉田社長に伺ってみました。「自分の好きなお酒を好きな飲み方で飲んだら良いと思います。お酒はその人の味覚に合ったもので良いんです。別に高いお酒飲まなあかんということでなく、自分の口に合えばそれが一番良いお酒です」。

相性の良いお酒に出会うには、それを味わう側もそこへ辿り着くために旅をするわけで、ただ納得できそうなお酒に出会えたとしても、その香りや口当たりで、永遠に自分の味覚が満足し続けるということにはなかなかならないように思われます。ところがこの『緑一』という銘酒は、その優しい香りと、飲んだ時の柔らかい舌触りそして喉ごしの良さから、胃にグウッと流し込むと、じわじわと込み上がってくる味わいが満面の笑顔を導いてくれるのです。永遠におつき合いしたいお酒です。

お宅の台所に一本。気がついたら何にでも『緑一』はいかがでしょうか。