八百屋の飯屋「びわとも」
難波の繁華街の喧騒から、一筋逸れた精華小劇場(旧精華小学校)の裏手。こじんまりとたたずむ「八百屋の飯屋 びわとも」は、福島区にある青果商「フレッシュフーズ松本」を母体とする店で、大阪の旬の地野菜やなにわの伝統野菜を生かした手作りメニューが味わえます。そう、普段は食卓の脇役である野菜たちが、この店では堂々の主役ぶり!大阪の土の恵みをいただいてカラダがじわじわ元気になれそう...そんな気がするお店なのです。
八百屋を生かした手作りごはんを
「『びわとも』ってちょっと変わった店名でしょ? 実は妻の実家の苗字なんです。丸っこい文字ばかりやし、なんかいい感じやなと思って」と語るのは、店主の松本光司さんです。この場所で長らく寿司屋を営んでいた奥さんの両親から店舗を受け継ぎ、「じゃあ八百屋を生かした飯屋をしよか」と約7年前、同店をオープンしました。「八百屋の飯屋、と名づけたのは、上質で新鮮な野菜の本当に美味しさを味わって欲しいと思ったからです。八百屋やから化学調味料や添加物、冷凍ものを使うのは忍びない。時間と手間隙をかけた手作りの味、心を込めたあったかいごはんがモットーです」。生産量が少なく、生産時期も短いなにわの伝統野菜も青果業ならではのルートを生かして極力入荷し、手に入れば即、その日の定食の小鉢としてメニューに加えています。春は「泉州蕗の白和え」、夏は「毛馬胡瓜と鱧皮"や"勝間南京煮」、冬は「田辺大根煮」や「天王寺蕪の菊花」などなどその顔ぶれは多彩。大阪府下の農家から仕入れた旬の野菜を使った新しいメニューの開拓にも余念がありません。では、そんな料理の中から、早速、「いただきま~す!」
飲み干したい渾身のピューレ
まずは「菊菜餅」。茹でてみじん切りにした大阪菊菜を道明寺粉と混ぜて練りこみ、餅にして、白味噌の汁を張った一品です。シイタケ、ニンジン、ゴボウが鮮やかな彩りを添えて、まるでハレの日の椀物のよう。大阪・藤井寺にある道明寺で最初に作られたといわれる道明寺粉の粒粒の食感、カツオと昆布で丁寧にとった出汁の風味、京都をはじめ関西ではおなじみの白味噌も優しい味わいです。「今の若い人はなかなか白味噌を食べる機会がないようですし。大阪の野菜と粉で作った餅にはやっぱり、白味噌が合うかなあ、と思うてね」。う~ん、ほっと癒されます。
もう一品、熱々で運ばれてきたのは「野菜炒め」です。一見、どこでも見かける料理ですが、一口食べると「うわぁ、野菜が甘~い!」。大阪産のキャベツやタマネギ、ニンジン、ハクサイ、ピーマン、モヤシ、ニラ、そして小さくカットされた出汁巻きが、それぞれの歯ごたえを競い合いながら、うま味を出し合っている......そんな印象です。「ふふ、秘密はね、手作りピューレです。どうしたらうま味がでるやろか、と悩んで、到達したのがこれなんですわ。まず牛と鶏それぞれから丁寧にスープを取って、2つを合わせます。そこにしいたけ、昆布、タマネギ、ニンジンを加えて自家製ブイヨンを作ります。タマネギとジャガイモ、洗い米を約30分炒め、このブイヨンで延ばしてピューレ状にし、醤油、みりん、砂糖などで味つけします。炒めた野菜にはこのピューレを加えるだけ。他の調味料は不要。トロリとした薄味のピューレが野菜の味を引き立たせてくれるんやろね。手早く炒めるから野菜もシャキッと仕上がります」。最後の一滴まで飲み干したい渾身のピューレ。昼ランチはこの野菜炒めに2種類の小鉢、ごはん、味噌汁、漬物が付いて840円です。それにしても秘密のピューレの作り方、書いてもいいんですか? 「かめへんよ。それにこんな手間かかるもん、どこもしはれへんのちゃうかな」。なるほど......。
疲れたときに立ち寄ってもらえる場所に
手間と時間は惜しまないという松本さんは、定休日にも一人、出汁の仕込みの為に厨房に立ちます。長年務めた青果業を受け継いだ息子さんは、美味しい野菜を求めて日々、大阪を走り回っているそうです。「野菜の料理を通じてお客さんに、ちょっとだけ健康について考えてもらえたら、という思いもあります。せやけど、あんまり言うと差し出がましいしね。食べるもんは美味しく食べていただくのが一番ですから(笑)」。客層は、昼はほとんどが女性。夜は会社帰りの人たちや、昼に来店した女性が家族や親を連れて続々とやってきます。美味しいものは自分だけではなく、大事な人にも分けてあげたい、そう思うのは人情なのでしょうね。そういえば各テーブルに置かれたメニューのページには、こんな言葉が添えてありました。「ちょっと疲れたな。お袋の味、恋しくなった。そんな時、思い出してもらえる場所に」。「びわとも」はそんな店です。
昼:八百屋の野菜炒め定食840円、日替わり魚定食840円ほか
夜:一品料理などいろいろ
問い合わせ:06-6641-6123
営業時間:昼11:30~14:30
夜17:00~21:00(ラストオーダー20:30)
定休日 毎週水曜日。火曜は昼のみ営業(夜は休み)