大阪食文化の原点

大阪をぐるっと見渡すと、太平洋から流れる黒潮が大阪湾、瀬戸内へと続く海。どーんと広がる大阪平野。それをばーんと扇状に囲むように連なる山々。この地形が語るのは、古来より水陸両方から様々な産物が集まる場所であり、海山里の食材が豊富に生産されてきた土地だということ。たとえば昆布。北海道や東北でしか採れない昆布が、江戸時代以降、北前船で大量に大阪に運び込まれます。そして、大阪の味=ダシの文化を確立します。このダシは、様々な食材の旨みをすべて生かしながら目にも美しい料理=うす味の文化を作り上げます。ここでは、大阪の食文化の歴史と背景を紹介します。

昆布・ダシ文化・食材・商人
ここでは、大阪の「おいしさ」を支える要素を四つのカテゴリーでご紹介します。一つ目は、「昆布」。江戸時代以降、北海道から届く昆布は、大阪の味をより深く多様な料理へと発展する大きな役割を果たします。二つ目は「ダシの文化」。大阪の料理には、昆布に、鰹節や煮干などのうまみを加わり、食材のハーモニーを楽しむ味覚を作り上げます。三つ目は、「食材」。飛鳥・奈良時代の頃より、水運の発達で日本各地、大陸・朝鮮半島から様々な食材が運び込まれました。近世以降、「天下の台所」と言われる日本の集散地の拠点となり、ますます豊富な食材が大阪に溢れます。又近郊でも様々な野菜や豊富な魚介がありました。四つ目は、これらの物流を支えた「商人」。商人たちによって、おいしいものをいかにおいしく食べるか日本の食の基本とも言える「味」が完成されます。大阪の風土や歴史から、原点を紐解いて見ましょう。
なにわの伝統野菜
「なにわ伝統野菜」とは、①およそ100年前以上から大阪で栽培されていたもの。②苗、種子等の来歴が明らかで大阪独自の品目、品種かつ栽培に供する苗、種子等の確保が可能、③大阪府内で栽培されているもの。この3つの条件を満たすものが、「なにわの伝統野菜」として大阪府から認定されます。伝統野 菜は、害虫の被害や、気温の変化に弱いため、ほかの野菜に比べて手間がかかります。しかし、「大阪の味」のために農家の人たちは大事に育て守っているので す。

ここで、「なにわ伝統野菜」の生産地を訪ね、農家のみなさんにその栽培方法や特徴などを順番に伺っていきます。
大阪市中央卸売市場
昭和6(1931)年、江戸時代から続いてきた青物市場、魚、乾物などの市場を統合し、卸売り専門の巨大市場として、福島の野田に「大阪市中央卸売市場」が開業しました。平成14年には新装し、現在30万㎡の敷地には、全国各地のみならず、世界各国から食材が集まってきます。江戸時代の天満や雑喉場の活気を思い起こさせます。
現在、大阪には多くの食材が集まります。そのひとつひとつは収穫の時期が違います。特に大阪人は「旬のもの」を大切にしてきました。さて、今年はどんな旬の食材が楽しめるのでしょうか。月ごとに、代表的な「旬のもの」を大阪市中央卸売市場本場市場協会資料室勤務を経験された酒井亮介さんに月ごとに様々な食材情報をご紹介いただきます。
船場料理の12ヶ月
「天下の台所」といわれた大阪の商人街の中心地だった船場。薬や呉服、材木、米などを扱う大店が並び、旦那さん、御寮さん、若旦那にいとさん(お嬢さん)たち家族と、番頭さんや丁稚などの使用人が寝食を共にしていました。普段は質素な食事ですが、毎月の節句や行事には、ご馳走が作られました。その料理は、大阪の食文化の凝縮でもあります。長年大阪の町人の生活史を研究している近江晴子さんが、船場の旧家出身の水落静さん(明治37年=1904年生)から、江戸から昭和初期にかけての大阪商人の食卓を聞き取りました。同家に伝わる「年中行事帳(文政期1818~1830年)」の資料を参考に、月ごとの行事と料理を紹介します。