「大黒」かやくご飯

大黒

西のダシ文化が生んだ飯料理

かやくご飯は、米といっしょに野菜や山菜、肉類などを炊き込む料理。ところ変われば呼び名も変わって、炊き込みご飯、まぜご飯、醤油めし、五目めし、かやくめし、かやくご飯、と色んな名前で呼ばれ全国で愛されています。とはいえ、庶民の食生活に最も深く浸透しているエリアといえば、大阪がダントツでしょう。上方の人はこのかやくご飯がことのほか好きで、とりわけうどんとかやくご飯をセットで食べるのが好まれています。あるいは、豚汁や粕汁などの汁物とかやくご飯のセットも、定番メニューとして人気です。

これは、ダシを効かせたかやくご飯と汁物が、同種の旨味のハーモニーをからませ合って、ベストマッチするからにほかなりません。それだけで食べてもおいしいかやくご飯という単品メニューは、関西風のおつゆというパートナーを得て、一層の輝きを得るのです。

大黒

そんなかやくご飯好きの大阪で、かやくご飯の名店と言えば、真っ先に思い浮かぶのが、明治35年創業のここ「大黒」。塗りの椀をあけるとほのかに漂うおダシの香り、そして具であるお揚げさんとゴボウが発する香気も食欲を刺激します。素材ひとつひとつの味を殺さぬよう、具は少なめに炊きあげられ、醤油のうす味も生きています。

店名を染め抜いた暖簾と年季の入った丸いちょうちん、そして玄関に面して並ぶ鉢植えの木。下町のしもた屋風の店構えが実にシブめで、しばしレトロな浪花のグルメ紀行へといざなってくれます。

かつては芸妓さんたちに愛された
この看板メニューも、今では家庭の味を
求める若い方々に人気

大黒

昔、このお店の界隈は色街だったそうです。そのためお昼時になると、準備に慌ただしい芸妓さんたちから愛されたのが、大黒のかやく御飯のルーツだそう。

当時のメニューは、かやく御飯のほか、味噌汁・焼き魚・大根おろしの4品のみ。それで充分やりくりできたのですから、今から思えばすごいことですね。老舗の和食処なので、お客の層はご年配の方が中心と思いきや、最近は意外と若いサラリーマンやOLさんが多いそうです。おそらく、家庭で「おふくろの味」を食べる機会が減ってきている反動かもしれません。

商都大阪だからこそ
重宝がられた万能メニュー

大黒

大阪でかやくご飯が愛された背景には、商人を中心とした町人の都市であったことがあげられます。寸暇を惜しんで商いに精を出す商売人にとって、かやくご飯はまことに重宝なメニューです。おかずとご飯が一体化していて、手っ取り早く食べるのにこれほど適したものはありません。つまり、主食も副食も一緒になっているのが、かやくご飯という料理の位置づけなのです。これに汁物がついていれば、栄養もしっかりとれるし1日働くスタミナも補給できます。そんな理由で、多くの奉公人を抱える商家やその周辺の食堂では、昔からかやくご飯が定番メニューとして好まれてきました。

また大阪では、かやくご飯はおふくろの味、家庭の味としても浸透しています。ダシの取り方、加薬の種類などによって、それぞれの家庭の味がしっかりと伝承されていて、「子供のころ、母親が炊いてくれた熱々のかやくご飯の味が忘れられない」という大阪人はたくさんいます。現在でも依然として子供たちに人気のメニューとなっています。

所在地/大阪市中央区道頓堀2-2-7
TEL・FAX/06-6211-1101