本町「ゼー六」
自家製アイスクリームのブランド
大正2年の創業
大阪市中央区で東横堀川にかかる本町橋から本町通を西へ行くと木造一軒家の喫茶店がある。「ゼー六」といい、手づくりのアイスクリームで知られている。さらっとした食感、懐かしい素朴な味にファンは多い。夏の間は行列ができるくらいの人気商品だ。「安くて、うまくて、衛生的。手抜きしないのが最高の技術と心得てきました」と話す二代目当主の廣瀬徳也さん(80)。
店は廣瀬さんの父が大正2年(1913)に創業。もともとは「ゼー六三十日(みそか)堂」の名をもつ和菓子屋だった。現在の店舗は昭和2年(1927)に改装したのが、戦災をくぐりぬけ残ったものだ。「京都からよんだ茶室づくりの大工さんが泊まり込み、父の指図で手のこんだ造作をしたときいてます」昔のままの陳列棚、床の間、押し戸のドアなど和洋折衷の喫茶空間は、独特な雰囲気をもつ。昭和の初めにはアイスキャンデーをつくったり、食堂も営業していた話からは先代のモダンぶりが想像できるのだった。
懐かしい味の自家製アイスクリーム
自家製アイスクリームは、そうした「ゼー六」の家風を受け継ぎ、確立されたように思われてくる。「戦後すぐに父が亡くなり、私らは口でおぼえていた味をたよりにするしかありませんでした」塩と氷をかきまぜ製造していたのが、新しい機械になり材料が変わっても、できるのは近代のアイスクリームそのものなんだから、懐かし味が伝わるはずだ。
3代目に引き継がれるゼー六ブランド
いまは、廣瀬さんの息子の光徳さん(44)が三代目を継ぎ、一家でゼー六ブランドを守る。「現代の工場生産品は冷凍乳製品であって、本当のアイスクリームやないと思てます。私らはメーカーをゆすぶるような商品をつくっていかな」と、心強い。
たまたま店頭で、アイスクリームを買いにきた若い子が、廣瀬さんに「おおきに、2個で200万円」といわれてとまどうのを目にした。最近は、このシャレがほかではきけないのである。よくなじむ「ゼー六」のような店こそ大阪なのに。通じないのかなあ。
ゼー六の屋号をもつ店が大阪に三つある。市内の本町、道修町、東大阪市の永和で、各店は三兄弟が独立したもの。徳也さんは末っ子だが、結果的に本町の創業店を継いでいるのだそうだ。いまはそれぞれ独立採算。本家、本店、元祖と自称して、伝統のアイスクリームにみがきをかけあっているとのこと。
ちなみに「ぜーろく」とは、「贅六」と書いて、商人に無用の贅物六つ(禄、閥、引、学、太刀、身分)をさす言葉が由来だそうだ。
大阪市中央区本町1―3―22Tel:06―6261―2606