下町で愛され続ける名物コロッケ
やろく

やろく

「住吉さん」の愛称で市民に親しまれている住吉大社。路面電車が町を駆け抜け、初めて訪れた人でもどこか懐かしさを感じるような、下町情緒あふれる風景。そんな町の一角に「やろく」はあります。創業者は多田善松(ぜんまつ)さん。丁稚先で料理を学んだ善松さんによって1935(昭和10)年に開店されました。現在も店で振る舞われているオリジナルの卵コロッケを編み出したのも、善松さんです。約70年の時を経ても、この名物コロッケに多くの人が魅了され、地元の人々はもちろん、遠方からやって来る常連客などで店は賑わいをみせています。

常連さんたちに支えられて守られた暖簾

やろく

現在に至るまでには、さまざまな出来事がありました。戦争もその一つ。住吉大社のすぐそばということもあって、幸いにも戦火を逃れることができたそうです。それでも世の中は外で食事をするなど考えられない時代。しかし当時、この界隈には数多くの著名人が住んでおり、接待などに店を何度も利用し支えてくれたのだそうです。棋士の升田幸三氏や作家の藤沢桓夫氏といった著名人の名前は、現在も入口にかけられた暖簾にしっかりと刻みこまれています。

17歳から店を

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善松さん亡き後、息子である善一(よしかず)さんが店を引き継ぎます。しかし、現・主人の喜景(よしかげ)さんが17歳の時に他界。三代目の喜景さんは、若干17歳にして店を担うことになったのです。経験を積んだ人間であっても、店を切り盛りするということは並大抵の仕事ではありません。ましてや、当時の喜景さんは成人前の青年だったのです。けれども、喜景さんは負けませんでした。父・善一さんの下で修行し独立したシェフの店に入り、修行を積んだのです。今までやってこれたのは、ある人物の一言があったからだと喜景さんは話します。修行をしながら自分の店のこともしなければならない日々。そんな時、朝早く店の前を掃除している喜景さんに、近所の和菓子屋の女将さんが言ったのです。「そうやって努力していることは必ず誰かが見ていてくれるから」と。この夏リニューアルされたばかりの店内には、立派に店を切り盛りする三代目・喜景さんの姿があります。そして、代々受け継がれてきた名物・卵コロッケが多くの客の舌を楽しませているのです。

所在地/大阪市住吉区東粉浜3-30-16
電話/06-6671-5080